【山の木を活かす⑩】チェーンソーミルで雪害木のスギを板にする|4m材を作業小屋の床へ

雪で折れたスギを、チェーンソーで板にする。

今回の「山の木を活かす」は、チェーンソーミルを使った製材です。

雪害を受けたスギを長さ約4mの板材に製材し、作業小屋のロフトの床板として使いました。

床板だけでなく、作業小屋のテーブルや椅子の板にも、チェーンソーミルで製材した木材を使っています。

大型の製材機がなくても、山で伐った木を必要な寸法の板にし、自分たちで使うことができます。

今回は、その工程を動画を中心に紹介します。

動画|チェーンソーミルでスギを製材する

特注の鉄製ガイドで最初の基準面をつくり、その面を基準にスギを板材へ製材していきます。動画は一部を8倍速で編集しています。

4m材を製材するための特注ガイド

使用したのは、アメリカのGranberg(グランバーグ)社製のアラスカンチェーンソーミル「G778-30」です。

チェーンソーのガイドバーにソーミルを取り付け、丸太の長さ方向へ走らせることで板材を製材します。

今回使用したチェーンソーはSTIHL MS 500i。排気量79.2cm³、出力5.0kWの大型チェーンソーに、65cmのガイドバーと縦挽き用ソーチェーンを取り付けました。

雪害木のスギを製材した板とチェーンソーミルを取り付けたSTIHL MS 500i
STIHL MS 500iに取り付けたアラスカンチェーンソーミル。雪害木のスギを、約4mの板材に製材しました。

チェーンソーミルで最初に必要になるのが、平らな基準面をつくることです。

丸太には凹凸や曲がりがあるため、そのままソーミルを載せても真っすぐな板にはなりません。

今回は長さ約4mの材を製材するため、町内の鉄工所に専用ガイドを製作してもらいました。

使用するのは、長さ4.3mの角形鋼材2本です。

製材する丸太の両端に、切り込みを設けた鉄板を水平に固定し、そこへ2本の鋼材を載せます。

ただ、4.3mの鋼材は自重で中央部分がわずかにたわみます。

そこで途中3か所、約1m間隔でナットを溶接し、M12ボルトで丸太側から支えることで、ガイドの高さを調整できるようにしました。

このガイドにチェーンソーミルを沿わせ、まず丸太の上面を切って平らな基準面をつくります。

一面が平らになれば、鉄製ガイドは取り外します。

2回目からは、先ほど製材した平らな面にチェーンソーミルを直接沿わせます。

そして1枚目、2枚目、3枚目と、必要な厚さの板を順番に製材していきます。

つまり、最初の一面だけ特注ガイドを使い、その後は製材した木材そのものをガイドにする仕組みです。

動画の前半と後半を見ると、その違いが分かります。

縦挽きはチェーンソーへの負荷が大きい

通常の伐倒や玉切りでは、木の繊維を横切る方向に切ります。

一方、チェーンソーミルでは、丸太の長さ方向、つまり繊維に沿って切り進みます。

木材は繊維方向によって切削の性質が異なり、チェーンソーミルでは丸太の幅いっぱいに刃を入れながら、数メートルにわたって切削を続けます。

そのため、通常の玉切りと比べて一回の切削時間が長く、チェーンソー本体やガイドバー、ソーチェーンには高い負荷が連続してかかります。

今回使用したのは、製材用のリッピングチェーンです。

一般的な横挽き用チェーンより浅い10度の目立て角とし、木材の縦挽きに適した形になっています。

製材では、チェーンの切れ味も重要です。

切れないチェーンを無理に押し進めれば、作業効率が落ちるだけでなく、チェーンソーの発熱も増えます。

MS 500iのような大型チェーンソーでも連続して無理をさせず、途中で休ませながら作業を進めます。

今回の製材は真冬だったため、夏場に比べれば熱の面では多少有利でしたが、チェーンの切れ味、張り、チェーンオイル、本体の状態を確認しながら作業しました。

雪害木が、作業小屋の床板になる

チェーンソーミルで製材したスギ板を張っている作業小屋のロフト床
チェーンソーミルで製材した約4mのスギ板を、作業小屋のロフト床に使用。林産物の乾燥や荷物置場として使います。

今回製材したのは、雪害を受けたスギです。

山から搬出し、チェーンソーミルで板にして、作業小屋のロフト床として使いました。

製材して終わりではなく、実際に必要なものとして使うところまでが、今回の木の活用です。

チェーンソーミルで製材した木材をロフト床やテーブル、椅子に使った作業小屋
完成した作業小屋。ロフトの床板だけでなく、テーブルや椅子にもチェーンソーミルで製材した木材を使っています。
雪害木のスギ板を使った作業小屋のロフト床を下から見た様子
下から見た作業小屋のロフト床。雪害木のスギから製材した板を床材として使っています。

必要な木を、必要な形に

大型の製材設備には、高い生産性と寸法精度があります。

一方、チェーンソーミルは大量生産には向きませんが、山や作業場所へ持ち込み、少量の丸太を必要な寸法に製材できます。

市場へ出荷する木。
薪にする木。
ホダ木にする木。
板や柱にする木。

その木の太さや形、状態に合わせて用途を考え、自分たちで加工できれば、山から出てくる木の使い道は広がります。

今回も、雪で折れたスギが、作業小屋の床板やテーブル、椅子になりました。

町内の鉄工所の技術も借りながら必要な道具をつくり、山から出した木をできるだけ次の用途へつなげる。

これからも、その木に合った使い方を考えながら、山の木を活かしていきます。


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

山の木を活かすシリーズ

一本の木を、どこまで活かせるか。

① 製材編|コナラを板材として活かす
② ホダ木編|コナラをシイタケ原木として活かす
③ 炭焼き編|コナラとヤマザクラを木炭として活かす
④ 枝利用編|ヤマザクラとコナラの枝を手すり・道具の取っ手として活かす
⑤ 雪害木編|チェーンソーミルで山の木を柱や梁などの構造材として活かす
⑥ 薪編|出荷できないヒノキも燃料として活かす
⑦ 萌芽更新編|ミズナラを伐って、使って、また育てる
⑧ 森林循環編|立ち枯れ木を森へ還す
⑨ 薪づくり編|支障木のミズナラとリョウブを薪として活かす
⑩ 製材編②|チェーンソーミルと特注ガイドで雪害木のスギを板にする

同じ一本の木でも、太さや形、品質によって活かし方は変わります。

私たちは、山で育った木をできる限り無駄なく活かし、
森の価値を未来へつないでいきたいと考えています。

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