【活動報告】石積みを学ぶ4日間|真砂土の切土を保護する作業道整備
森林作業道のヘアピンカーブを抜けた先に、真砂土の切土が高くなっている場所があります。
この部分の崩れを抑え、作業道を維持していくために、切土の下部に石積みを施工しました。山側の木組みによる「裏積み工」と組み合わせ、切土面の保護と足元の安定を図りました。
今回は、島根県から自伐型林業歴10年の講師を招き、安芸太田町で自伐型林業に取り組む施業者4人が、4日間にわたって指導を受けました。
石の選び方から基礎づくり、かみ合わせ、排水まで、現場で学んだ施工の要点を紹介します。
※この記事は、講師の指導のもとで行った施工の記録です。寸法や勾配は今回の現場条件に応じたものであり、すべての現場に共通する施工基準ではありません。

石積みと木組みを組み合わせて切土を保護する
作業道の山側では、切土面を保護するために木材を使うことがあります。今回の現場でいう「裏積み工」は、この山側の切土に施す木組みによる土留めを指します。
今回は、切土が高く、真砂土の崩れが懸念される箇所で、下部の安定を重視して石積みを選びました。周囲の木組みと組み合わせ、現場の状態に応じて石と木を使い分けています。
今回取り組んだのは、コンクリートやモルタルを使わずに石を積む「空石積み」です。
表面をそろえるだけでなく、石の形や据わりを見ながらかみ合わせ、背面にも石を詰めて支えることが大切だと教わりました。
根石・積み石・ぐり石の役割
使う石は、大きさだけでなく、据える場所と役割を考えて選びます。
根石――全体の基礎となる石
根石は、最下段に据える石です。
上に積む石を支えるため、大きく、据わりのよいものを選びます。「根石」は大きさの名称ではなく、基礎を担う石の呼び方です。
根石が動くと、その上の石積みにも影響します。石を選ぶことと、安定して据えられる地盤を整えることが重要になります。
積み石――壁の本体をつくる石
積み石は、壁の本体を積み上げる石です。今回は20cm以上を目安に選びました。
表に見える形だけでなく、山側へ入る奥行きも確認します。この奥行きを「控え」といい、石を安定させるうえで大切になります。
ぐり石――背面を支え、水を通す石
ぐり石は、積み石の背面などに詰める小さな石です。今回は拳大を目安に使いました。
積み石の奥側を支えるとともに、石の隙間を通して水が抜ける構造をつくります。
完成すると見えにくくなりますが、表面の大きな石だけで石積みが成り立っているわけではありません。背面のぐり石も、安定を支える重要な材料です。
石を運び、床掘りで基礎をつくる
今回、最初に現場へ運び込んだ石は、クローラーダンプで合計5.5杯分です。
大きな根石から小さなぐり石まで、役割に応じた石を確保する必要があります。石積みは、積む作業だけでなく、材料の選別や運搬にも手間がかかります。
石を積み始める前には、基礎となる根石を据えるための「床掘り」を行いました。


今回は、根石の高さの半分ほどが路面より下に入る深さを目安とし、掘削する奥行きは約50cmとしました。これらの寸法は、根石の大きさや地盤の状態、石積みの高さなどを踏まえて判断するものです。
まず地盤を整え、根石を安定させてから、その上の石を積んでいきました。

「載せる」だけでなく、荷重を分けて支える
下の2つの石で支える
今回の指導で繰り返し確認したのは、上の石を、下の2つの石に接するように積むことです。
2か所の接触面で荷重を受けられるよう、石の向きや位置を調整します。ただ触れていればよいのではなく、ぐらつきがなく、安定して支えられる状態をつくります。
「座布団」の状態を避ける
平たい石の上に別の石をただ重ね、上の石の荷重が下の1つの石だけにかかる状態を、今回の指導では「座布団」と呼び、避けるよう教わりました。
平たい面があると、その上に石を置きたくなります。しかし、それだけでは、下の2つの石へ荷重を分けて支える積み方になりません。
平たい石も、形に応じて斜めに据えるなどして、下の2つの石に接する位置を探します。見た目の収まりだけでなく、荷重がどこへ伝わるかを考えて積むことが大切です。
手前を高く、奥側を低くする
一つひとつの石は、手前の路面側を高く、奥の山側を低くすることを意識して据えました。
奥側が高くなり、石が外へ滑り出しやすい向きにならないようにするためです。奥側にはぐり石を詰めて支えます。
据わりが悪い場合は、石の向きや組み合わせを見直します。山側への奥行きがある石を使うなど、内部での支え方も考えながら調整しました。

今回は3分勾配を採用
今回の指導では、石積みの勾配の目安として2〜3分が示されました。そのうえで、今回は真砂土の現場条件を踏まえ、3分勾配としました。
3分勾配とは、高さ1mに対して、石積みの表面が山側へ30cm後退する傾きです。
これは石積み全体の勾配であり、一つひとつの石を手前高・奥側低に据えることとは区別して考えます。
また、勾配だけで安定が決まるわけではありません。基礎、石の控え、かみ合わせ、背面のぐり石などを合わせて確認しながら施工しました。
土や砂で隙間を埋めず、水の通り道を残す
今回の施工では、石の間を土や砂で埋めないことも重視しました。
空石積みは、石の隙間を通して水が抜ける構造です。その隙間を土や砂でふさがず、排水性を保ちます。
ただし、大きな空洞を残してよいという意味ではありません。必要な箇所には石を詰め、積み石の背面にはぐり石を入れて、支持と排水性を確保します。
一方で、水と一緒に背面の真砂土まで流れ出すと、内部に空洞ができるおそれがあります。水が抜けることに加え、土砂が流出していないかも確認する必要があります。
石積みの利点と、手間のかかるところ
空石積みには、排水性を確保しやすいことや、補修の際に石を再利用しやすいという利点があります。自然石の形を生かした構造は、森林の景観にもなじみます。
一方で、材料の確保と運搬、石の選別、据え付けには時間と労力がかかります。
大きさも形も異なる石を、どこに、どの向きで使うか。その判断を積み重ねる必要があり、表面を整えるだけでは安定した石積みにはなりません。
また、今回の施工は切土下部の保護と安定を図るもので、上に残る切土面を含めた斜面全体の崩壊を防げるというものではありません。
施工後も、降雨後を中心に、石のずれや膨らみ、背面の土砂流出、根元が水で削られていないかなどを確認し、必要な手入れを続けていきます。
学んだことを、これからの実践につなげる
4日間の指導を通じて、石の選び方や据え方だけでなく、基礎や背面の支え、荷重の伝わり方を考える大切さを学びました。
一方で、形の異なる石を見て、適した場所や向きを判断するには、経験を重ねる必要があると感じました。
今回の施工箇所は、今後も状態を確認していきます。
教わったことを実践と観察を通じて確かめながら、作業道の整備や手入れに生かせるよう、理解と技術を深めていきます。


