【森と生きる人 #03】相続した山と、これからの付き合い方を考える|上田芳行さん
「森と生きる人」では、安芸太田町での活動や見学会・研修などを通じて出会った、森や山と向き合う人たちを紹介します。
山を受け継ぐことと、その山のこれからを決めることは、同じではありません。
広島市に暮らす上田芳行さんは、北広島町にある山林や田畑などを相続しました。
道路沿いの木を伐採したことをきっかけに、木が伐られ、運び出され、使われていくところを実際に経験しました。
その後、自分の山との付き合い方を考える参考にしようと、安芸太田町で開催した施業地見学会に参加しました。実際に整備された森林を歩き、スタッフに質問しながら、森林の管理や作業道について話を聞きました。
10月にはチェーンソー取扱特別教育にも参加し、自らチェーンソーを使って丸太を切る実習を経験しました。
山のこれからについて、すぐに一つの答えを出すのではなく、実際に山を見て、人の話を聞き、自分でも体験しながら考えています。
上田さんは今、そんな形で自分の山との関わりを少しずつ広げています。
今回は、上田さんが山と向き合うようになったこれまでの歩みについて、話を聞きました。

山林と田畑を受け継ぐ
上田さんが相続したのは、北広島町にある山林のほか、田畑や住居などです。敷地内にはお墓もあります。
田畑の一部は地域の方に利用してもらっていますが、住居周辺では毎年草刈りが必要になるなど、土地を維持していくための手入れも続きます。

住居は2026年4月に解体しました。
山林には広葉樹が多く、尾根筋にはマツも見られます。
山林を含めて土地を受け継いだことで、上田さんは少しずつ、
「この山と、これからどう付き合っていくか」
を考えるようになりました。
山の管理方法や活用方法は、森林の状態や地形、所有者の暮らし方によっても変わります。
まずは自分の山を見ながら、できることを考えていく。
上田さんにとって、そこが出発点になりました。

道路沿いの木を伐ることから
山との関わりが具体的になったきっかけの一つが、県道沿いに立つ木でした。
所有地にあるヒノキや広葉樹の枝が道路側へ張り出しており、枯れたサクラもあったことから、安全面を考えて伐採することになりました。
2025年11月と2026年3月に、ヒノキや広葉樹、枯れたサクラを順次伐採しました。
上田さんにとって、立っていた木が伐倒され、枝を払い、一定の長さに造材され、運び出されていく一連の作業を身近で見る機会となりました。
ヒノキを伐採した際には、奥さまや友人も一緒に、伐採後の枝などを整理しました。
広葉樹については、薪ストーブを利用している人たちの協力を得て伐採し、伐った木も薪として引き取ってもらいました。
道路の安全を確保するための伐採でしたが、木を伐るだけではなく、
「伐った木を、その後どう活かすか」
ということにも触れる機会になりました。


手入れされた山を、自分の目で見る
自分の山との付き合い方を考える中で、上田さんが次に足を運んだのが、安芸太田町で開催した当会の施業地見学会でした。
2026年7月26日。
仕事の有給休暇を取り、実際に自伐型林業の手法で整備されている森林を見学しました。
当日は施業地を歩きながら、木を一度に伐り尽くすのではなく、残す木を育てながら繰り返し間伐していく考え方や、森林を継続的に管理するための作業道などについて説明を聞きました。
上田さんも、気になったことをスタッフに質問しながら見学しました。
また、参加していた地元の山林所有者などと話をする機会もありました。
北広島町にある上田さんの山とは、樹種も地形も条件も異なります。
それでも、実際に手入れされている森林を歩き、山を管理している人から直接話を聞くことは、自分の山を考える一つの参考になります。
本や資料だけでは分からないことを、実際の山で確かめてみる。
上田さんにとって、施業地見学会はそんな機会になりました。

見ることから、自分でもやってみる
7月の施業地見学会への参加に続き、上田さんは2026年10月3日・4日・10日の3日間、安芸太田町で開催した「チェーンソー取扱特別教育」を受講しました。
チェーンソーの構造や安全な取り扱い、伐木作業の基本などを学び、実習では実際にチェーンソーを使って丸太を切りました。


研修全体の様子は「令和8年度 自伐型林業研修が始まりました|チェーンソー取扱特別教育」の活動報告でも紹介しています。
これまでは、自分の所有地で木が伐られる様子を見る側でした。
今回は、自分自身がチェーンソーを持ち、操作する側として木に触れます。
もちろん、研修を受けたからといって、すぐに自分一人で山の木を伐ったり、森林管理を行ったりするわけではありません。
自分でできることと、経験のある人に任せた方がよいことがあります。また、自分の山にどのような管理方法が合っているのかも、山の状態を見ながら考えていく必要があります。
そうしたことを考えるためにも、森林を見るだけでなく、実際の作業や道具について知ることは一つの経験になります。
施業地を「見る」ことから、今度は自分でも「やってみる」ことへ。
上田さんと山との関わりは、少しずつ広がっています。
自分の山との付き合い方を考えていく
山林を相続した人が、最初から明確な森林管理の方針を持っているとは限りません。
森林の状態、地形、道路との関係、そして所有する人自身の仕事や暮らし。
山との付き合い方は、それぞれの条件によって違います。
上田さんも、今の段階で山の将来像を一つに決めているわけではありません。
道路沿いの木を伐る現場に立ち会い、伐った木が薪として使われるところを見ました。
安芸太田町では、実際に手入れされた施業地を歩き、山を管理している人に質問しました。
そして今度は、自分でもチェーンソーを手にし、実際に木を切ることを経験しました。
そうした経験を一つずつ重ねながら、
「自分の山と、これからどう付き合っていくか」
を考えています。
山との関わり方は、一つではありません。
まず自分の山に目を向けること。
実際に手入れされた山を見ること。
人の話を聞くこと。そして、自分でも体験してみること。
そこから始まる森との関係もあります。
上田さんの山との付き合い方も、これから少しずつ形になっていきます。
取材・文:久保谷幸雄
山や森林管理について考えている方へ
一般社団法人安芸太田町自伐型林業を推進する会では、安芸太田町で施業地見学会や自伐型林業研修などを実施しています。
実際の森林を見てみたい方、自伐型林業について学んでみたい方は、当会の研修・イベント情報をご覧ください。
