【壊れない作業道シリーズ⑥】切土・盛土の基本|森林作業道の崩壊を防ぐ施工技術
【壊れない作業道シリーズ】
① 基本
② なぜ道が壊れるのか
③ ルート選定
④ 縦断勾配
⑤ 横断勾配
⑥ 切土・盛土
⑦ 排水
⑧ 洗い越し
⑨ ヘアピンカーブ
⑩ 木組み
⑪ 抜根
⑫ 支障木伐採
森林作業道は、排水やルート選定だけで壊れるわけではありません。
切土・盛土の施工が不適切であれば、
どれだけ良いルートを選んでも、
数年後に路面沈下や法面崩壊が発生することがあります。
壊れない作業道づくりでは、
・必要最小限の切土と盛土
・丁寧な転圧
・土の性質を活かした施工
が重要になります。
今回は、森林作業道の寿命を大きく左右する
「切土・盛土」
の基本的な考え方を解説します。
切土・盛土とは?

森林作業道は山腹に設置されるため、
山側を削る
切土(きりど)
と、
谷側へ土を盛る
盛土(もりど)
を組み合わせて施工します。
重要なのは、
必要最小限の切土と盛土で道をつくること
です。
山を大きく削れば地山を不安定にし、
盛土を大きくしすぎれば崩壊リスクが高まります。
自然地形を活かしながら、
最小限の地形改変で施工することが基本です。
壊れない作業道の基本断面
壊れない作業道では、
- 道幅:2.0~2.5m程度
- 切り高:原則1.4m以下(ヘアピンを除く)
を一つの目安として施工します。
軽トラックや小型バックホーが通行できる最小限の規模に抑えることで、
地山への負荷を小さくし、
維持管理しやすい作業道になります。
切土法面は原則として垂直にする
森林作業道では、地質条件を見極めながら、
必要最小限の切土を基本とします。
一般的には法面を寝かせた方が安定するように見えますが、
森林作業道では必ずしもそうとは限りません。
法面を大きく寝かせるためには、
より多くの地山を削る必要があります。
その結果、地山内部の応力バランスを崩し、
かえって崩壊の原因になることがあります。
そのため森林作業道では、
必要最小限の切土を行った結果として、
法面が垂直に近い形になることが少なくありません。
ただし、
土質や地質条件によっては法面を緩く施工する場合もあり、
現場ごとの判断が重要です。
盛土は「土止まり線(棚)」から始まる

盛土施工で最も重要なのは、
最初の基礎づくりです。
その基準となるのが、
土止まり線(棚)
です。
土止まり線(地域によっては土留まり線とも呼ばれる)とは、
文字通り上から土を落とした際に、
自然に土が止まる場所を指します。
斜面の途中に棚状になっている地形で、
獣道や昔の人が歩いた道の跡は、
この土止まり線であることも少なくありません。
長い年月をかけて形成された安定した場所であり、
盛土の基礎づくりに適しています。
盛土の基礎づくり
まず、土止まり線(棚)を利用しながら、
バックホーのバケットを差し込んで丁寧に垂直転圧します。
盛土が崩壊する原因の多くは、
基礎部分の締固め不足です。
見えなくなる部分だからこそ、
時間をかけてしっかり締め固めることが重要になります。
また、施工中に発生した広葉樹の幼木や、
広葉樹の支障木の根株などは、
基礎部分付近へ埋設することがあります。
これは盛土の補強だけでなく、
将来的な萌芽更新や法面緑化を促す目的もあります。
法面外側は表土で形成する
基礎ができたら、
盛土を少しずつ積み上げていきます。
その際、法面の外側には表土を配置します。
表土には、
植物の種子や有機物が多く含まれており、
施工後に自然な植生回復を促します。
森林作業道では、
人工的な法面緑化ではなく、
自然植生による法面保護を基本としています。
表土を法面へ配置することで、
草本類や低木類が自然に定着し、
長期的な侵食防止につながります。
法面内側には深土を配置する
盛土の内側には、
表土の下にある深土を配置します。
盛土は一度に積み上げるのではなく、
少しずつ施工しながら、
バケットで丁寧に転圧していきます。
また、盛土は谷側へ張り出すのではなく、
少しずつ内側へずらしながら積み上げることで、
安定した法面勾配を形成します。
壊れない盛土は、
「締め固めながら積み上げる」
という意識が重要です。
路面には深土を配置する
盛土の仕上げとして、
路面には深土を配置します。
表土には落葉や腐植などの有機物が多く含まれているため、
雨が降るとぬかるみやすくなります。
その結果、わだち掘れや路面侵食の原因になります。
そのため、壊れない作業道では、
路面に表土を残さず、
深土を配置することが基本になります。
路面の締まり具合を揃える
切土で出た土を盛土した後は、
路面全体の締まり具合にも注意します。
切土側(山側)の路面は
もともとの地山であるため非常に締まっていますが、
盛土側(谷側)は十分に転圧していても
施工後しばらくの間はわずかな沈下が生じることがあります。
そのため現場によっては、
切土側の路面地山を一定程度掘り起こしてほぐし、
路面全体の締まり具合を近づける施工を行うことがあります。
これは施工直後の状態ではなく、
将来的な沈下や路面変形を見越した施工上の工夫です。
壊れない作業道では、
完成時だけでなく数年後の路面状態まで考えながら
施工することが重要です。
特に作業道の幅が狭い自伐型林業では、
わずかな沈下でも路面排水や走行性に影響するため、
路面全体の締まり具合を揃える考え方が重要になります。
表土が厚い場合は天地返しを行う
ただし、現場によっては表土層が厚く、
そのまま施工すると路面まで表土になってしまう場合があります。
そのような場合は、
天地返し
を行います。
天地返しとは、
施工の過程で表土と深土の位置関係を調整し、
路面に深土がくるように施工する方法です。
目的は土をひっくり返すことではなく、
路面に深土を配置し、表土を法面へ活かすこと
にあります。

法面転圧が盛土の寿命を決める
盛土施工で見落とされがちなのが、
法面転圧です。
盛土内部だけでなく、
法面表面もバケットで丁寧に押さえます。
法面転圧を行うことで、
- 表面侵食の防止
- 雨水浸透の抑制
- 崩壊防止
につながります。
壊れない盛土は、
最後の仕上げまで手を抜きません。
真砂土が強い現場では表土を混ぜることもある
西日本など地域によっては、
真砂土が非常に強く、
乾燥するとサラサラになりすぎる現場もあります。
そのような場合には、
例外的に表土を少量混ぜながら路面を仕上げることがあります。
適度な粘りを持たせることで、
路面の安定性が向上する場合があるためです。
ただし、これは土質条件による例外的な対応であり、
基本は路面に深土を配置する考え方に変わりありません。
盛土は完成後も育つ
施工直後の盛土は完成形ではありません。
表土に含まれる種子や根株から植物が再生し、
時間の経過とともに法面が安定していきます。
草本類、低木類、広葉樹の萌芽などが根を張ることで、
土壌が保持され、侵食を防ぐ力が高まります。
森林作業道の盛土は、
自然植生とともに育ちながら安定していく構造物でもあります。
まとめ
壊れない作業道の切土・盛土で重要なのは
・必要最小限の切土・盛土
・土止まり線(棚)を活用した基礎づくり
・丁寧な転圧
・路面は深土、法面は表土
・法面転圧の徹底
です。
山を削りすぎない。
盛りすぎない。
そして土の性質を理解しながら
一層ずつ丁寧に施工する。
それが
100年使える作業道につながります。
事務局 久保谷
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