【壊れない作業道シリーズ⑥】切土・盛土の基本|崩れにくい路体をつくる施工技術

森林作業道では、ルート選定や排水だけでなく、道そのものを支える「切土・盛土」の施工が重要です。

どれだけ良い場所に道を通しても、盛土の基礎が不十分だったり、締固めが足りなかったりすれば、施工後に路面の沈下や法面の崩れにつながることがあります。

自伐型林業の作業道づくりで大切にしているのは、

必要以上に山を削らないこと。
必要以上に土を盛らないこと。

そして、地形や土の性質を見ながら、基礎から一つずつ丁寧につくることです。

今回は、自伐型林業の現場で実践されている切土・盛土の基本的な考え方を紹介します。

※森林作業道の施工基準は、地域や事業、現場条件によって異なります。本記事では自伐型林業の現場で実践されてきた施工の考え方を中心に紹介しています。補助事業等で施工する場合は、適用される指針・基準も確認してください。


切土・盛土とは?

森林作業道を山腹につくる場合、山側の地山を削る「切土」と、谷側へ土を盛る「盛土」を組み合わせて路体をつくります。

基本となるのは、山側を切り、谷側へ盛る「片切片盛」です。

ここで重要なのは、切土や盛土をできるだけ大きくしないことです。

山を大きく削れば切土法面が高くなり、谷側へ大量に土を出せば盛土も大きくなります。

自然の地形をできるだけ活かしながら、必要最小限の土工量で道を通すことが、崩れにくい作業道づくりの基本になります。

道幅2.0〜2.5m程度、切り高1.4m以下、切土法面を原則垂直とした自伐型林業の森林作業道の基本断面図
自伐型林業の作業道では、軽トラックや小型バックホーが通行できる必要最小限の幅とし、切土・盛土をできるだけ小さく抑えます。

道幅と切り高を抑える

自伐型林業の作業道では、

道幅は2.0〜2.5m程度、切り高は原則1.4m以下(ヘアピンカーブなどを除く)

を一つの目安として施工します。

大型車両が通れる幅を最初から確保するのではなく、軽トラックや小型バックホーなど、実際に使用する機械が安全に通行できる必要最小限の規模に抑えます。

道幅を狭くすれば、その分だけ山側の切土を小さくでき、谷側の盛土量も抑えることができます。

山を大きく改変せず、地形に沿わせながら道をつくる。

それが、自伐型林業の作業道づくりの基本的な考え方です。

安芸太田町の森林内につくられた幅の狭い森林作業道を軽トラックが走行している様子
地形に沿いながら、切土を必要最小限に抑えて施工した森林作業道。必要以上に道幅を広げないことで、山への地形改変も小さくできます。

切土法面は原則として垂直にする

自伐型林業の作業道では、切土法面は原則として垂直に近く切る「直切り」を基本とします。

一般的な土木工事では、法面を寝かせることで安定を図る考え方があります。

一方、自伐型林業では、法面を寝かせるために地山を大きく削るよりも、切土そのものを小さくし、地山をできるだけ残すことを重視します。

また、法面を大きく寝かせると、雨滴を受ける面も広くなります。

切土高を低く抑え、法面を直切りにすることで、雨が直接当たり続ける面を小さくし、表面の侵食を抑えるという考え方です。

ただし、どのような土質でも機械的に垂直に切ればよいという意味ではありません。

崩れやすい土質、転石を多く含む場所、湧水がある場所などでは、地山の状態を見ながら施工方法を判断します。

大切なのは、

「垂直にすること」そのものではなく、切土を必要最小限に抑え、安定した地山をできるだけ残すこと

です。


盛土は「土止まり線(棚)」から考える

盛土施工で重要なのが、最初の基礎づくりです。

自伐型林業の現場では、斜面の中で自然に土が止まりやすい場所を「土止まり線(棚)」と呼ぶことがあります。

上から土を落としたときに自然に止まるような、斜面のわずかな平坦部や地形の変化です。

獣道や昔の山道などが、こうした場所を通っていることもあります。

長い年月の中で土が止まってきた地形は、盛土の基礎位置を考える一つの手掛かりになります。

ただし、棚状になっている場所であれば、どこでもそのまま基礎にできるわけではありません。

周囲の地形、土質、水の流れなどを確認しながら、完成する盛土の形を想定して基礎位置を決めます。

斜面に土を落としたとき自然に土が止まる土止まり線と、獣道や昔の山道との位置関係を示した図
斜面の中で自然に土が止まりやすい「土止まり線(棚)」は、盛土の基礎位置を考える手掛かりになります。


盛土の基礎をしっかりつくる

盛土の安定性を左右するのが、見えなくなる基礎部分です。

まず、土止まり線など地形の状態を見ながら基礎位置を決め、バックホーのバケットを差し込み、基礎となる部分を丁寧に締め固めます。

上部だけをきれいに仕上げても、基礎が弱ければ盛土全体を安定させることはできません。

見えなくなる場所だからこそ、施工の最初に時間をかけます。

根株などを状況に応じて活用する

施工中には、支障木の根株や広葉樹の幼木などが発生することがあります。

自伐型林業では、こうした根株などをすべて山の外へ搬出するのではなく、現場条件に応じて盛土や法面に埋め込み、活用する場合があります。

根株の形、大きさ、向き、周囲の土の状態などを見ながら配置し、土留めや法面保護を補助する材料として利用します。

ただし、根株だけで盛土を支えるという考え方ではありません。

盛土の基本は、あくまで地山に基礎をつくり、土を十分に締め固めることです。

また、広葉樹の根株などでは、条件によって施工後に萌芽することがあります。

萌芽した植物が法面を覆うことで、植生の回復にもつながります。


表土と深土を使い分ける

森林の地表付近にある表土には、落葉や腐植、植物の種子や根などが多く含まれています。

その下には、有機物が比較的少なく、路体として締め固めやすい深土があります。

自伐型林業の盛土では、この二つの性質を見ながら使い分けます。

法面外側には表土を活かす

盛土法面の外側には、表土を配置します。

表土に含まれている植物の種子や根などから草本類や低木類が再生することで、施工後の植生回復を促すことができます。

植生が法面表面を覆うことは、雨滴や表面流による侵食を抑える助けになります。

人工的な緑化だけに頼らず、もともとその場所にある土や植物を活かしていくことも、自伐型林業の作業道づくりの特徴です。

盛土の内側には深土を使う

一方、盛土の中心部や路体をつくる部分には、締め固めやすい深土を使うことを基本とします。

一度に大量の土を盛るのではなく、少しずつ土を積み上げ、その都度バックホーで丁寧に締め固めます。

盛土を谷側へ単純に押し出すのではなく、完成する法面の形を見ながら少しずつ積み上げていきます。

「盛ってから締める」のではなく、「締めながら盛る」。

これが盛土づくりの基本です。


路面には深土を配置する

路面にも、基本的には深土を配置します。

腐植や落葉などの有機物を多く含む表土がそのまま路面に残ると、雨天時に軟らかくなり、わだちや路面変形につながる場合があります。

そのため、路面には締まりやすい深土がくるように施工します。


路面全体の締まり具合を揃える

片切片盛の作業道では、山側と谷側で路体の状態が異なります。

山側はもともとの地山ですが、谷側は新しく盛った土です。

どれだけ丁寧に盛土を転圧しても、施工後しばらくの間は盛土側がわずかに沈下することがあります。

そのため、現場によっては、山側の強く締まった地山部分を一度ほぐし、盛土側と合わせて路面全体を締め直すことがあります。

これは、安定した地山を弱くすることが目的ではありません。

山側と谷側の締まり具合の差を小さくし、将来的な不同沈下や路面変形を抑えるための施工です。

森林作業道は完成した日の状態だけでなく、数年後にどうなっているかを考えてつくる必要があります。


表土が厚い場合は「天地返し」を行う

現場によっては、表土層が厚く、そのまま施工すると路面まで表土になってしまうことがあります。

その場合には「天地返し」を行います。

天地返しとは、施工途中で表土と深土の位置関係を調整し、最終的に路面へ深土がくるように施工する方法です。

目的は単に土をひっくり返すことではありません。

表土は法面へ活かし、締まりやすい深土で路体と路面をつくる。

そのための土の使い分けです。

土止まり線の確認、基礎の締固め、表土と深土の配置、天地返しによる路面形成までの盛土施工手順を4段階で示した図
土止まり線や地形を確認して基礎をつくり、表土と深土を使い分けながら少しずつ締め固めて盛土を形成します。


法面まで丁寧に締め固める

盛土は路面だけを締めればよいわけではありません。

盛土内部を締め固めながら、最後に法面表面もバケットで丁寧に押さえます。

法面表面を整えて締めることで、土がばらばらの状態で残ることを防ぎ、雨による表面侵食を抑えることにつながります。

基礎、路体、路面、法面。

見える部分だけでなく、盛土全体を一つの構造として仕上げることが大切です。


真砂土では表土を混ぜることもある

安芸太田町を含む中国地方には、花崗岩が風化した真砂土が多く見られます。

真砂土にもさまざまな状態がありますが、現場によっては粒子がばらけやすく、そのままでは締まりにくいことがあります。

こうした場合、自伐型林業の現場では、土質や含水状態を見ながら、表土を少量混ぜて締まりを調整することがあります。

表土に含まれる細かな土分などを利用し、適度な粘りを持たせる考え方です。

ただし、表土を多く混ぜればよいという意味ではありません。

有機物の量や土の状態によっては、かえって締まりにくくなる場合もあります。

あくまで、

現場の土を見て、その土が締まる状態をつくる

ための選択肢の一つです。

基本は深土を使いながら、必要に応じて現場の土質に合わせて調整します。


植生の回復が法面表面を守る

施工後、法面へ配置した表土や、活用した根株などから植物が再生することがあります。

草本類や低木、広葉樹の萌芽などが法面を覆うことで、雨滴が直接土に当たるのを和らげ、表面侵食を抑える助けになります。

ただし、植物が生えれば盛土そのものが安定するという意味ではありません。

盛土の安定を支える基本は、

基礎をしっかりつくること、
土を少しずつ積み上げること、
十分に締め固めることです。

その上で、もともとその場所にある表土や植生を活かし、時間をかけて法面を森林へなじませていきます。


まとめ

自伐型林業の切土・盛土で大切なのは、まず山を大きく動かさないことです。

道幅と切り高を抑え、切土法面は原則として直切りにする。

盛土は土止まり線や地形を見ながら基礎をつくり、少しずつ締め固めながら積み上げる。

表土と深土をそれぞれの性質に合わせて使い、必要に応じて根株や現場の土も活かす。

そして、完成直後だけでなく、数年後も使い続けられる路体をつくる。

山を削りすぎない。
盛りすぎない。
土の性質を読み、見えなくなる部分から丁寧につくる。

こうした一つひとつの施工が、長く森林管理に使い続けられる作業道につながります。


「壊れない作業道」という表現について

本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土とこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。

これは、どのような豪雨や災害でも「絶対に壊れない」という意味ではありません。

地形・地質・土質・水の流れなど、その場所の条件を見ながら適切に施工し、施工後も点検・維持管理を続けることが前提です。


参考資料


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

関連記事|壊れない作業道シリーズ

作業道づくりや森林管理に関心のある方へ

山林の管理や森林整備についてのご相談を受け付けています。

作業道づくりを現場で学びたい方は、見学会・研修の案内をご覧ください。