【壊れない作業道シリーズ⑩】岩を避ける木組み工法|自伐型林業の現場施工

作業道を通すための現場の工夫

山の作業道づくりでは、大きな岩や立木など、簡単には動かせないものに出会うことがあります。

そのような場所で、無理に岩を取り除いたり、山側を大きく掘削したりすると、切土が大きくなり、地形を必要以上に変えることにつながります。

今回の現場では、山側に大きな岩があり、そのままでは必要な道幅を確保することができませんでした。

そこで、岩を動かさずに残し、谷側に木組みを施工して道幅を確保しました。

この記事では、実際の施工写真をもとに、木組みの構造や施工手順、現場で意識しているポイントを紹介します。


施工前の状態(ビフォー)

山側に大きな岩がある急傾斜地で森林作業道を施工している様子
施工前。山側に大きな岩があり、そのままでは必要な道幅を確保できない場所。

この場所では、山側に動かせない大きな岩がありました。

そのため、

① 山側へ道を寄せることができない
② 岩を避けて山側を掘ると、切土が大きくなる
③ 谷側は傾斜が急で、盛土だけでは必要な道幅を確保しにくい

という条件がありました。

そこで、大きな岩はそのまま残し、谷側へ木組みを入れて必要な道幅を確保することにしました。

木組みは、桁と横木を組みながら盛土を入れ、谷側の盛土を安定させるために使います。

地域によっては、このような木組みを「土留め工」と呼ぶこともあります。


木組み施工後(アフター)

急な谷側斜面に桁と横木を4段に組んだ森林作業道の木組み施工
谷側に4段の木組みを施工。桁と横木を組みながら盛土を入れ、必要な道幅を確保している。

今回の場所では、谷側に丸太を4段組みました。

木組みを入れることで、

・谷側の盛土を安定させる
・必要な道幅を確保する
・大きな岩を無理に動かさずに道を通す

ことができます。

木組みだけで道を支えるのではなく、桁と横木を組み、その間に土を入れて締め固めながら、木組みと盛土を一体として施工していきます。

地形や障害物の位置に合わせながら施工方法を変えていくことも、作業道づくりでは重要です。

木組みの基本構造

木組みの構造は、次のようになっています。

① 桁
道に対して平行に置く丸太

② 横木
道に対して直角に置く丸太

③ 盛土
木組みの内側に土を入れ、締め固めてつくる部分

施工手順は次のとおりです。

① 重機で桁を置く位置を転圧する

② 桁を設置する

③ 横木を設置する
横木は約1m間隔で配置します。

④ 横木と桁を釘またはかすがいで連結する

⑤ 盛土を入れ、締め固める

⑥ ②~⑤を繰り返す

次の段を組むときは、前の段の横木と次の桁も釘またはかすがいで連結します。

今回の施工では、横木の長さはおおむね80~100cmとしています。

前段の桁と次の桁は、丸太1本分内側にずらします。

こうして桁と横木を段状に組み、その間に盛土を入れて締め固めることで、谷側の盛土を安定させます。

また、一番下の桁は地山にしっかり据え、最終的には土に納まるように施工します。

なお、長い桁を通しておくことで、複数の横木を1本の桁でつなぐことができます。

写真の現場では、1段目と2段目の桁に、それぞれ長さ約8.5mの丸太を使用しています。

以下の写真は、別の現場で施工した木組みの例です。

桁と横木を段状に組みながら施工している森林作業道の木組み
別の現場での木組み施工例。桁と横木を組みながら段を重ねている施工途中の状態。横木は約1m間隔で配置している。

木組み施工のポイント

木組みを施工するときは、次の点を特に意識しています。

・一番下の桁を地山にしっかり据え、最終的に土に納まるようにする
・盛土は一度に入れすぎず、入れながら十分に締め固める
・必要に応じて長い桁を使い、複数の横木を連続してつなぐ
・地形や岩などの現場条件に合わせ、必要な範囲だけ施工する

木組みだけで作業道を支えるのではなく、地山への定着と盛土の締固めを組み合わせて施工することが重要です。


岩や地形に合わせて施工する

木組みは、どこにでも入れるものではありません。

山側に大きな岩がある場所や、急な谷側斜面など、通常の切土・盛土だけでは必要な道幅を確保しにくい場所で、現場条件に合わせて使います。

今回の現場では、大きな岩を取り除くのではなく、岩をそのまま残して、その位置を避けるように木組みを施工しました。

山の中では、岩だけでなく、残したい立木などが施工位置にある場合もあります。

障害物をすべて取り除くのではなく、その場所の地形や条件を見ながら、必要な範囲だけ木組みを使うことも一つの方法です。

木組みで約2.2mの道幅を確保

大きな岩を避けるため谷側に木組みを施工し約2.2mの道幅を確保した森林作業道
手前に4段、その先に5段の木組みを施工。山側の大きな岩を避けながら、施工前は2m未満だった道幅を約2.2mまで確保した。

写真の左手前が、この記事で紹介している木組みです。

実は、その先にも右側に動かせない大きな岩があります。

その場所では5段の木組みを施工し、谷側へ道幅を確保しました。

施工前は2m未満だった道幅が、木組みを施工することで約2.2mになりました。

このように、山側の岩を無理に動かさず、谷側の地形に合わせて木組みを入れることで、必要な道幅を確保できる場合があります。


木組みを使うときに大切なこと

木組みを施工すれば、それだけで壊れにくい作業道になるわけではありません。

まず大切なのは、地形や水の流れを読み、できるだけ無理のないルートを選ぶことです。

そのうえで、

・必要以上に山側を掘らない
・盛土をしっかり締め固める
・水を一か所に集めない
・地形や障害物に合わせて施工方法を変える

といった基本を守る必要があります。

木組みは、通常の切土・盛土だけでは道幅の確保が難しい場所で使う技術の一つです。

木組みそのものを目的にするのではなく、地形に合わせて必要な場所へ、必要な範囲で使うことが大切です。


まとめ

今回の現場では、山側にある大きな岩を避けるため、谷側に木組みを施工して作業道の幅を確保しました。

木組みは、

① 桁を設置する
② 横木を組む
③ 桁と横木を連結する
④ 盛土を入れて締め固める
⑤ 次の段を丸太1本分内側へずらしながら繰り返す

という施工を基本としています。

木組みは、岩や急な谷側斜面など、現場ごとの条件に合わせながら道を通すための技術の一つです。

地形をよく見て、必要以上の掘削を避け、盛土を十分に締め固めながら施工することが、壊れにくい作業道づくりにつながります。


「壊れない作業道」について

本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土とこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。

「絶対に壊れない」という意味ではありません。


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

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