【壊れない作業道シリーズ⑧】なぜ道が壊れるのか|崩壊する作業道には必ず原因がある
〜壊れない作業道づくりのために知るべきこと〜
森林作業道は、単なる「通るための道」ではありません。
山の地形・水・土・木の力と向き合いながら、長い年月に耐える“森林のインフラ”です。
しかし現場では、
- 大雨で路肩が流れる
- 盛土が崩れる
- 法面が崩壊する
- 路面がぬかるむ
- 道が川のようになる
といった問題が後を絶ちません。
では、なぜ道は壊れるのでしょうか。
原因の多くは、豪雨そのものではなく、
「山の性質を無視した設計と施工」にあります。
自伐型林業では、長期間使い続けることを前提に、
「壊れにくい」ではなく、
“壊れない思想”で道をつくることを重視します。


急傾斜、真砂土、切り高(ヘアピンなのである程度は仕方がない)、施工方法など複数の要因で山側が崩壊しました。(左)
裏積み工を施し直してから3年以上経過しましたが、その後は崩壊していません。
① 路線選定が間違っている
〜崩れる場所には理由がある〜
もっとも重要なのが「どこに道を通すか」です。
山には、
- 昔崩れた跡
- 水が集まる地形
- 湧水帯
- 谷地形
- 表土が浅い場所
- 急傾斜地
など、もともと不安定な場所があります。
そこへ無理に道を入れると、施工直後は問題なく見えても、
最近は毎年のように多発する豪雨で一気に崩壊します。
特に危険なのが、
- 谷を登る線形
- 水が集中する窪地
- 尾根から谷へ落ち込む変換点
- 大木の生えてない急傾斜地
です。
山の中では「水」が通る場所で対策なしに道を作ると、
最終的に道は水路になります。
② 道幅が広すぎる
〜広い道ほど崩れやすい〜
「安全のため」と言って道幅を広げすぎるケースがあります。
しかし、森林作業道では幅を広げるほど山を傷めます。
道幅が広くなると、
- 切土量が増える
- 盛土量が増える
- 山側を大きく削る
- 谷側へ大量の土を出す
という問題が起こります。
結果として、
- 法面崩壊
- 盛土沈下
- 路肩崩壊
につながります。
自伐型林業では、小型機械を前提にすることで、
必要最小限の幅員:2.5m以下に抑えます。
道は「広いほど良い」のではなく、
“山へのダメージを最小化する幅”
が重要なのです。
③ 切り高が高すぎる
〜高い法面は崩れる前提になる〜
切土法面の高さ(切り高)が高くなると、崩壊リスクは急激に高まります。
特に1.4mを超えると、
- 雨水で侵食される
- 土圧が増える
- 根の保持力を失う
などの問題が起こります。
さらに、高い切土は復旧費も大きくなります。
自伐型林業では、
- 地山に沿わせる
- 道幅を狭くする
- 無理に直線化しない
ことで、切り高を抑えます。
山を削って道を作るのではなく、
“山の形に道を合わせる”
という考え方です。
④ 盛土の転圧不足
〜崩れる道の多くは「締まっていない」〜
盛土は、置いただけでは安定しません。
転圧不足の盛土は内部に空隙(くうげき:すきま)が残り、
- 雨水が浸透
- 内部が緩む
- 荷重で沈下
- 路肩崩壊
を引き起こします。
特に危険なのが、
- 地山から作っていない
- 垂直に転圧できていない
- 一気に厚く盛る
施工です。
見た目は完成していても、内部では崩壊が始まっています。
壊れない作業道では、
- 薄く盛る
- 何度も締める
- 地山と一体化させる
ことが重要です。
⑤ 土質への理解不足
〜真砂土は「乾くと強く、濡れると弱い」〜
土には性質があります。
特に真砂土は、西日本の山地で非常に多い土質ですが、
- 水に弱い
- 崩れやすい
- 洗掘されやすい
という特徴があります。
にもかかわらず、
- 排水対策なし
- 盛土保護なし
- 勾配処理なし
で施工すると、大雨時に一気に崩れます。
土を見る力は、壊れない道づくりの基本です。
同じ設計でも、
- 真砂土
- 粘土質
- 礫混じり
- 岩盤
では、必要な施工が変わります。
つまり、
「どこでも同じ作り方」は通用しない
ということです。
⑥ 排水が不十分
〜道を壊す最大の原因は“水”〜
森林作業道の崩壊原因の多くは、水です。
- 路面を流れる水
- 法面を流れる水
- 地中水
- 谷水
これらを適切に逃がせないと、道は必ず壊れます。
特に危険なのが、
- 長距離排水
- 横断排水不足
- 水の出口がない
- 路面が逆勾配
です。
排水設計が甘い道は、大雨時に「川」になります。
壊れない作業道では、
- 水を集めない
- すぐ逃がす
- 分散させる
- 洗い越しを使う
ことを徹底します。
つまり、
「水と戦わない」
ことが重要なのです。
⑦ 木を伐り過ぎている
〜森が弱ると山も弱る〜
作業道周辺で過度な伐採を行うと、山の保水力と土壌保持力が低下します。
木には、
- 雨を受け止める
- 土を守る
- 根で斜面を支える
- 水の流れを緩める
役割があります。
しかし皆伐に近い状態になると、
- 表土流出
- 乾燥
- 地温上昇
- 崩壊リスク増加
につながります。
自伐型林業では、
- 長伐期
- 多間伐・弱度間伐
- 樹冠を開けすぎない
ことで、森林の土壌保全機能を維持します。
道だけを丈夫にしても、森が弱れば意味がありません。

壊れない道は「思想」で決まる
壊れない作業道とは、
高価な資材を使った道ではありません。
- 山を読む
- 水を読む
- 土を読む
- 木を残す
- 必要以上に壊さない
という思想から生まれます。
自伐型林業の作業道は、
「森を壊さず、100年使い続ける道」
を目指します。
短期間だけ使う道ではなく、
次世代へ残す“森林の基盤”として考えることが重要です。
事務局 久保谷
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