【壊れない作業道シリーズ②】なぜ森林作業道は壊れるのか|崩壊を招く7つの要因

壊れにくい作業道をつくるために、まず壊れる原因を知る

森林作業道は、単なる「通るための道」ではありません。

間伐や搬出、森林整備を繰り返しながら、長く森林を管理していくための基盤です。

しかし山の中では、

・大雨で路肩が削られる
・盛土が沈下・崩壊する
・切土法面が崩れる
・路面がぬかるむ
・雨水が路面を流れ、道が水路のようになる

といったことが起こります。

豪雨が崩壊の引き金になることはありますが、被害の大きさは、路線選定、道幅、切土・盛土、土質への対応、排水、施工後の維持管理などによって大きく変わります。

このシリーズでは「壊れない作業道」という名称を使っていますが、自然の中につくる以上、絶対に壊れない道があるわけではありません。

私たちが目指しているのは、地形や水、土質を読み、山への負担をできるだけ小さくしながら、壊れにくく、補修しながら長く使い続けられる作業道です。

この記事でわかること

・森林作業道が壊れる主な原因
・なぜ路線選定が重要なのか
・道幅や切土・盛土と崩壊の関係
・安芸太田町に多い真砂土と水への対応
・施工後の点検・補修が必要な理由

急傾斜地で山側の切土法面が崩れた森林作業道
急傾斜の真砂土斜面で山側法面が崩れた箇所。
山側法面を裏積み工などで補修した森林作業道
写真は補修直後。同じ箇所は、補修から3年以上が経過した現在も問題なく利用できています(現在の状態を撮影した写真ではありません)。

急傾斜、土質、切り高、水の影響、施工方法など、道の崩壊は一つの原因だけで起こるとは限りません。複数の条件が重なることを前提に考える必要があります。

① 路線選定に無理がある

崩れやすい場所には理由がある

作業道づくりで最初に考えるのが、「どこに道を通すか」です。

山には、

・過去に崩れた跡
・水が集まりやすい凹地
・湧水が見られる場所
・沢や谷に近い場所
・崩れやすい土質の場所
・急傾斜地

など、道を通す際に特に注意が必要な場所があります。

こうした地形を十分に確認せず、無理に路線を通すと、施工直後は問題がなくても、まとまった雨が降ったときに崩壊や路面侵食につながることがあります。

特に、水が集まる地形へ道をそのまま通すと、雨水が路面へ流れ込み、作業道自体が水の通り道になってしまいます。

施工技術だけですべてを補うのではなく、

道をつくる前に、壊れにくい場所を選ぶ。

これが作業道づくりの出発点です。


② 道幅を必要以上に広げている

道幅が広がれば、山を動かす量も増える

作業道は広ければ安全、というわけではありません。

同じ斜面条件であれば、道幅を広げるほど、

・切土量が増える
・盛土量が増える
・山側を大きく削る
・谷側へ動かす土量が増える

傾向があります。

その結果、切土法面や盛土、路肩など不安定になりやすい部分も大きくなります。

私たちは小型バックホーや軽トラックなどを使うことを前提に、おおむね2~2.5m程度の必要最小限の幅員で施工しています。

重要なのは「狭ければよい」ということではありません。

使用する機械や車両が安全に通行できる幅を確保したうえで、

必要以上に山を削らない幅にすること

が大切です。


③ 切土が高くなりすぎている

山を大きく削らない

山側を掘削してできる法面を「切土法面」といいます。

切土が高くなれば、それだけ大きく地山を削ることになり、土質や傾斜、水の状態によっては法面が不安定になりやすくなります。

自伐型林業では、

・地形に沿って路線を通す
・道幅を必要最小限にする
・無理に直線的な道をつくらない

ことで切土を抑え、切り高1.4m以下を一つの基本的な目安として施工します。

ただし、1.4m以下であれば必ず安全という意味ではありません。

真砂土、粘土質、礫質、岩盤など土質によっても安定性は異なり、湧水や斜面の傾斜なども考慮する必要があります。

数字だけを見るのではなく、

その山の地形と土質に合わせて、できるだけ地形改変を小さくする。

という考え方が基本です。


④ 盛土の基礎・締固めが弱い

盛土は「置く」のではなく、路体としてつくる

谷側につくる盛土は、土を置いただけでは安定した路体にはなりません。

基礎が不安定だったり、十分な締固めができていなかったりすると、土の内部に弱い部分が残り、

・雨水が入り込む
・土が緩む
・車両荷重で沈下する
・路肩が変形する

などの原因になります。

盛土をつくるときは、安定した地山に基礎をつくり、その上へ土を薄く層状に積みながら、一層ずつしっかり締め固めていくことが重要です。

一度に厚く盛って表面だけを整えても、内部まで十分に締まっているとは限りません。

見た目ではなく、内部まで安定した路体をつくる。

これが盛土施工の基本です。


⑤ 土質に合った施工になっていない

同じ山でも、土の性質は場所によって違う

森林作業道は、どこでも同じ方法で施工できるわけではありません。

安芸太田町には花崗岩が風化してできた「真砂土」が多く見られます。

真砂土は風化の程度によって性質が異なりますが、水の影響を受けると粒子が流れたり、侵食が進んだりする場所があります。

一方で山には、

・粘土質の土
・石や岩を多く含む土
・岩盤が露出する場所

などもあります。

同じ道幅、同じ勾配、同じ施工方法でも、地形や土質が違えば必要な対応は変わります。

バックホーで掘ったときの土の状態、水のにじみ方、周囲の地形や植生なども見ながら、

その場所の土を見て施工方法を変えること

が重要です。


⑥ 水を一か所に集めてしまっている

作業道の崩壊には、水が大きく関わる

森林作業道が傷む過程では、水が大きく関わります。

山の中には、

・路面を流れる雨水
・山側斜面から流れ込む水
・地中から湧き出す水
・沢や谷を流れる水

があります。

問題なのは、水があることそのものではありません。

一か所へ大量の水を集めたり、長い距離を路面に流したりすることです。

水が集中すると、路面や路肩が少しずつ削られ、小さな侵食が大きな崩壊につながることがあります。

壊れにくい作業道では、

・水をできるだけ集めない
・長い距離を流さない
・地形を見ながらこまめに分散する
・必要な場所では路面排水や横断排水、洗い越しを設ける

ことで、水の流れを処理します。

水を無理に止めようとするのではなく、

もともとの山の水の流れを読み、安全な場所へ逃がす。

ことが重要です。


⑦ 施工後の点検・補修が不足している

作業道は「つくって終わり」ではない

どれだけ慎重に施工しても、森林作業道は自然の中にあります。

豪雨や積雪、凍結、車両の走行、倒木などによって、施工後も少しずつ状態は変化します。

特に大雨のあとは、

・排水の出口が詰まっていないか
・路面に深い水みちができていないか
・路肩が沈下していないか
・切土法面に小さな崩れが出ていないか
・湧水の位置が変わっていないか

を確認します。

小さな変化の段階で水の流れを直したり、土を戻したりすることで、大きな補修になる前に対応できる場合があります。

壊れにくい作業道は、

施工技術だけで完成するものではなく、点検と補修を重ねながら維持していくもの

です。


幅が広く切土が高く水が集中する道と、幅を抑え切土を低くして分散排水する壊れにくい森林作業道の断面比較図
森林作業道は、道幅、切土・盛土、排水など一つひとつの条件が重なって安定性が決まります。地形改変を抑え、水を一か所に集めないことが、壊れにくい道づくりの基本です。


壊れにくい道は、一つの技術だけではつくれない

森林作業道が壊れる原因は、一つとは限りません。

路線選定に少し無理があり、切土が高くなり、そこへ雨水が集中する。

盛土の締固めが不足した場所へ、大雨が続く。

このように複数の条件が重なることで、崩壊につながることがあります。

そのため重要なのは、

・地形を読む
・水を読む
・土を見る
・必要以上に山を削らない
・施工後も点検する

という一連の考え方です。

「壊れない作業道」という名称は、絶対に壊れないことを意味するものではありません。

豪雨、地すべり、土石流など、施工だけでは防ぐことのできない自然現象もあります。

それでも、山の性質を読み、地形への負担を小さくし、水を適切に処理し、施工後も手を入れていくことで、壊れにくく、長く使い続けられる道に近づけることはできます。

私たちが目指しているのは、短期間だけ使う道ではありません。

何度も山へ入り、間伐し、木を搬出し、次の世代へ森林をつないでいくための道です。

100年先の森を育て続けるために、長く使える森林の基盤をつくる。

それが、私たちの作業道づくりです。


まとめ

森林作業道を壊れにくくするためには、

・無理のない場所に道を通す
・道幅と切土を必要最小限にする
・安定した盛土をつくる
・土質に合わせて施工する
・水を一か所に集めない
・施工後も点検・補修する

ことが重要です。

次の記事では、これらの中でも施工前に特に重要となる「ルート選定」について、実際の山の地形をどのように見るのかを詳しく解説します。

このシリーズの考え方と参考資料

本シリーズでは、安芸太田町で行う森林作業道づくりについて、当会が現場で重視している考え方と施工事例を紹介しています。

路線計画や施工方法を検討する際は、林野庁「森林作業道作設指針」および広島県「広島県森林作業道作設指針」を参考にしています。

森林作業道の計画・施工は、地形、地質、土質、水の流れ、利用目的、関係する法令・基準などに応じて、現地ごとに検討が必要です。本文中で紹介する数値や施工方法は、すべての現場に一律に適用できるものではありません。

このシリーズでいう「壊れない作業道」は、絶対に壊れない道という意味ではありません。地形と水の流れに配慮し、必要以上に山を削らず、施工後も点検・補修を行いながら、壊れにくく長く使い続けることを目指す考え方です。

参考資料

・林野庁「路網整備の推進について(森林作業道作設指針)」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sagyoudo/romousuisin.html

・広島県「森林作業道の作設について(広島県森林作業道作設指針)」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/86/shinrinsagyoudou.html


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

関連記事|壊れない作業道シリーズ

作業道づくりや森林管理に関心のある方へ

山林の管理や森林整備についてのご相談を受け付けています。

作業道づくりを現場で学びたい方は、見学会・研修の案内をご覧ください。