「自伐型林業」が国の森林・林業基本計画に明記|3つの記載から見えるこれからの地域林業

2026(令和8)年6月5日、新たな「森林・林業基本計画」が閣議決定されました。

森林・林業基本計画は、森林・林業基本法に基づき、国の森林・林業政策の基本的な方向を定める重要な計画です。

おおむね5年ごとに見直されるこの基本計画に、今回、「自伐型林業」という言葉が3箇所に明記されました。

私たち一般社団法人安芸太田町自伐型林業を推進する会も、安芸太田町を拠点に自伐型林業に取り組んでいます。

では、国の基本計画の中で、自伐型林業はどのような文脈で書かれているのでしょうか。

実際の基本計画を見ながら、3箇所の記載とその意味を読み解いていきます。


森林・林業基本計画とは

森林・林業基本計画は、「森林・林業基本法」に基づいて政府が策定する、森林・林業施策の基本的な方針を示す計画です。

森林・林業をめぐる情勢の変化などを踏まえ、おおむね5年ごとに変更されています。

今回の計画では、

百年つづく「森の国・木の街」へ

を掲げ、森林資源の循環利用と多様で健全な森林づくりを進め、森林・林業・木材産業の好循環を生み出していく方向が示されました。

その中で注目したいのが、「自伐型林業」が3つの異なる文脈で記載されたことです。

整理すると、

① 多様な林業経営の担い手

② 山村地域で所得や仕事を生み出す取組

③ 長期にわたる持続的な林業経営を担う主体

という3つの位置づけです。

ここからは、基本計画の実際の記載を見ていきます。


① 多様な「林業経営の担い手」として自伐型林業を明記

森林・林業基本計画に記載された「自伐型林業」。林業経営の多様な担い手の一つとして明記されています(出典:林野庁「森林・林業基本計画」)。黄色マーカーは当会による加工。

最初に「自伐型林業」が登場するのは、これから森林・林業政策を展開していく上での基本的な視点について書かれた部分です。

ここでは、日本の森林は気候や地形、森林の状態などが地域によって異なり、それぞれの地域に適応した森林管理の方法が発展してきたことが示されています。

同時に、林業経営を担う人たちも多様化しているとして、その中に、

「民間事業者(自伐型林業に取り組む事業者を含む。)」

と、自伐型林業に取り組む事業者が明記されています。

さらに基本計画では、自伐型林業について、保有する森林や施業を受託した森林において、主として自家労働等によって行う小規模な林業という考え方が示されています。

ここがポイント

これは、「これからの日本の林業は自伐型林業で行う」という意味ではありません。

むしろ重要なのは、森林の状態や地形、地域の状況はそれぞれ異なるため、全国一律ではなく、多様な担い手や林業経営のあり方を活かしていくという考え方です。

その多様な担い手の一つとして、「自伐型林業」が具体的に示されています。


② 山村地域の「所得と仕事」を生み出す取組として明記

山村地域の所得・就業機会を確保する取組として「自伐型林業」が記載されています(出典:林野庁「森林・林業基本計画」)。黄色マーカーは当会による加工。

2箇所目は、山村地域の振興について書かれた部分です。

人口減少や高齢化が進む山村地域では、森林を適切に管理するだけでなく、森林を地域の所得や仕事につなげていくことが重要になります。

基本計画では、多様な収入と就業機会を確保する取組として、

「自伐型林業等の専ら自家労働等により木材生産等を実施する民間事業者の取組」

を促進する方向が示されています。

さらに、この部分を読み進めると、きのこ、木炭、薪、竹、漆、広葉樹、ジビエなど、森林にあるさまざまな地域資源の活用や高付加価値化についても触れられています。

安芸太田町の現場にもつながる考え方

私たちも、森林から木材を搬出することだけを林業とは考えていません。

これまで、森林作業道を開設する際に支障木として伐採したコナラやヤマザクラを、

・コナラを製材して板にする
・コナラをシイタケのホダ木として利用する
・コナラやヤマザクラを炭焼きの原木として利用する

といった形で活用してきました。

山にある資源をできるだけ無駄にせず、小さくても地域の仕事や所得につなげていく。

基本計画に示された山村地域での取組は、こうした地域での森林資源の活用ともつながるものだと考えています。


③ 「長期にわたる持続的な経営」を担う主体として明記

「長期にわたる持続的な経営」を担う主体の一つとして、自伐型林業に取り組む事業者が明記されています(出典:林野庁「森林・林業基本計画」)。黄色マーカーは当会による加工。

3箇所の中でも、私たちが特に注目しているのがこの記載です。

基本計画では、これからの林業経営が目指す方向として、

「長期にわたる持続的な経営」

が掲げられています。

そして、その経営を担う主体について、

「長期にわたる持続的な経営を担う主体は多様であり」

とした上で、森林組合や民間事業者、森林所有者などを例示しています。

その民間事業者の中に、

「自伐型林業に取り組む事業者」

が明記されました。

なぜ、この記載に注目するのか

自伐型林業では、一度木を伐って終わりではなく、同じ山に繰り返し入りながら森林を管理していくことを大切にします。

森林作業道を整備する。

間伐を行う。

残した木を育てる。

成長した森林に再び入り、必要な施業を行う。

そうやって、10年、20年、さらにその先まで山との関わりを続けていきます。

今回の基本計画が掲げる**「長期にわたる持続的な経営」**という方向と、自伐型林業が重なる部分は大きいと私たちは考えています。


3つの記載をつなげてみると

今回の森林・林業基本計画では、自伐型林業が単に3回記載されたというだけではありません。

それぞれを整理すると、

① 地域の条件に応じた多様な林業経営の担い手

   ↓

② 山村地域で所得や仕事を生み出す取組

   ↓

③ 長期にわたる持続的な森林経営を担う主体

という流れが見えてきます。

地域に森林を管理する人がいる。

その人たちが山に入り続けるための仕事と所得がある。

そして、一度きりの施業ではなく、長期にわたって同じ森林に関わり続ける。

この3つがつながることで、地域の森林を継続して管理していくことが可能になります。

私たちは、今回の3箇所の記載から、こうした地域林業の可能性を読み取っています。


「百年つづく森」を安芸太田町で

今回の森林・林業基本計画には、

百年つづく「森の国・木の街」へ

という言葉が掲げられています。

私たちが安芸太田町で目指しているのも、森林を次の世代へつないでいくことです。

小規模な森林作業道を整備し、山に継続して入ることのできる環境をつくる。

森林の状態や木の成長を見ながら間伐を繰り返し、残した木を育てる。

林内に光を入れ、広葉樹や下層植生も生育できる森林へ導いていく。

そして、山から生まれる木材や広葉樹などの資源を、できるだけ地域で活かしていく。

一度伐って終わるのではなく、森林と長く関わり続ける。

私たちは、こうした森林管理を地域に根付かせ、**「100年続く森づくり」**につなげていきたいと考えています。


基本計画への記載を、地域の現場につなげる

国の基本計画に「自伐型林業」という言葉が記載されたこと自体がゴールではありません。

大切なのは、基本計画に示された方向を、それぞれの地域の森林でどのように実践していくかです。

山を所有していても、どう管理すればいいのか分からない。

林業に興味があっても、技術を学ぶ機会がない。

森林を整備したくても、それを担う人がいない。

こうした地域の課題に対して、森林所有者、林業者、行政、地域住民などが関わりながら、その地域に合った森林管理の仕組みをつくっていく必要があります。

一般社団法人安芸太田町自伐型林業を推進する会では、安芸太田町において、自伐型林業の技術研修、担い手育成、施業地の確保などに取り組んでいます。

国の基本計画に書かれた言葉を、地域の山の中でどう形にしていくのか。

10年後だけではなく、50年後、100年後へ。

地域の森林を次の世代へつないでいけるよう、これからも現場で一つずつ取り組んでいきます。

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・2026年度 自伐型林業研修・見学会


参考資料

林野庁「森林・林業基本計画~百年つづく『森の国・木の街』へ~」(令和8年6月5日閣議決定)

林野庁「『森林・林業基本計画』及び『全国森林計画』の変更について」

※本記事は、2026(令和8)年6月5日に閣議決定された「森林・林業基本計画」をもとに、一般社団法人安芸太田町自伐型林業を推進する会が内容を整理・解説したものです。