【壊れない作業道シリーズ⑤】横断勾配(路面排水)|原則水平を基本に、地形に応じて使い分ける

森林作業道を長く使い続けるために、重要なのが水の処理です。

雨水が路面を長く流れると、轍やわずかな凹みに水が集まり、路面の侵食や路肩の弱体化につながります。

ただし、その対策として、すべての道を一律に谷側へ傾ければよいわけではありません。

森林作業道では、路面の横断勾配は原則として水平とするのが基本です。

そのうえで、地形や土質、縦断勾配、水の流れなどを見ながら、必要な場所では横断勾配による路面排水も活用します。

横断勾配は、壊れにくい道をつくるための排水手法の一つと考えています。

横断勾配とは

横断勾配とは、道の進行方向に対して左右方向につける勾配です。

進行方向の傾きを「縦断勾配」と呼ぶのに対し、路面の左右方向の傾きを「横断勾配」と呼びます。

路面に横断勾配をつけることで、路面に降った雨水を路外へ流すことができます。

ただし、森林作業道では、常に横断勾配をつけるわけではありません。

森林作業道の基本は「原則水平」

林野庁の「森林作業道作設指針」では、土構造を基本とする森林作業道について、原則として路面の横断勾配を水平としたうえで、縦断勾配をできるだけ緩やかにし、波形勾配などを利用して、こまめな分散排水を行う考え方が示されています。

大切なのは、横断勾配をつけること自体ではなく、

水を一か所に集めないこと
路面を長い距離流さないこと
少量のうちに安全な場所へ逃がすこと

です。

そのため、路面を一律に傾けるのではなく、地形そのものや縦断勾配、横断排水なども利用して、水を分散させます。

森林作業道は原則水平とし、必要な場所では3〜5%程度の横断勾配で路面排水する考え方を示した断面図
森林作業道の路面は原則水平を基本とし、地形・土質・水の流れなどに応じて、必要な場所では横断勾配による路面排水も活用します。横断勾配をつける場合、当会では3〜5%程度を一つの目安としています。

必要な場所では横断勾配も使う

一方、実際の山では、地形や土質、水の流れは場所によって異なります。

路面に水が滞留しやすい場所や、路面に降った雨を早めに路外へ逃がした方がよい場所では、横断勾配を利用した排水が有効な場合があります。

このとき重要なのは、

「横断勾配を何%つけるか」から考えるのではなく、「この水をどこへ逃がすか」から考えることです。

排水先の地形や路肩の安定性を確認し、安全に水を逃がせる場所へ導きます。

横断勾配をつける場合は3〜5%程度を一つの目安に

横断勾配によって路面排水を行う場合、当会では3〜5%程度を一つの目安として考えています。

例えば、幅2.5mの作業道では、

3%なら約7.5cm、
5%なら約12.5cm

の高低差になります。

ただし、これは森林作業道全体に一律につける勾配ではありません。

地形、土質、縦断勾配、水の流れ、排水先、路肩の安定性、車両の走行安全性などを見ながら、必要と判断した場所で使う実務上の目安です。

数字に合わせて道をつくるのではなく、現場を見ながら調整することが重要です。

ヘアピンも排水に活用する

森林作業道では、ヘアピンカーブも水を処理する重要な場所になります。

例えば、カーブへ入る前に水を逃がす方法のほか、現場条件によっては、ヘアピンの路面に横断方向の勾配をつけて排水する「逆カント」を利用する方法もあります。

自伐型林業の現場でも実践されている排水方法の一つです。

ここでも大切なのは、「ヘアピンは必ずこの形にする」と決めることではありません。

前後の縦断勾配、地形、水が流れてくる方向、排水先、路肩の安定性、車両の走行などを見ながら、その場所に適した方法を選びます。

一つの排水方法だけに頼らない

壊れにくい森林作業道では、横断勾配だけで水を処理するのではありません。

縦断勾配、波形勾配、横断勾配、横断排水、洗い越し、カーブなど、地形に応じた複数の方法を組み合わせます。

共通する考え方は、

水を集めない。
長く流さない。
少量のうちに分散して逃がす。

ことです。

一つの工法をすべての場所に当てはめるのではなく、山の地形と水の動きを見ながら使い分けます。

雨の日に水の動きを確認する

施工後の確認で分かりやすいのが、実際に雨が降ったときの水の動きを見ることです。

路面に水が溜まっていないか、轍の中を水が長く流れていないか、想定した場所から排水されているか、排水した水が路肩や盛土を侵食していないかを確認します。

施工時には分からなかった水の動きが、雨の日にははっきり見えることがあります。

問題があれば路面を整形し直すなど、実際の水の動きを見ながら修正していきます。

まとめ

森林作業道の横断勾配は、原則として水平が基本です。

そのうえで、地形や土質、縦断勾配、水の流れなどに応じて、必要な場所では横断勾配による路面排水も活用します。

横断勾配をつける場合、当会では3〜5%程度を一つの目安としていますが、大切なのは数字そのものではありません。

「水がどこから来て、どこへ流れ、どこなら安全に逃がせるか」

を現場で考えることです。

横断勾配も、波形勾配も、横断排水も、逆カントも、そのために使う手法の一つです。

壊れない作業道づくりでは、山の地形と水の動きを読みながら、水を集めず、短い距離で分散して逃がすことを基本にしています。

※「壊れない作業道」について
本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土とこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。「絶対に壊れない」という意味ではありません。

参考資料

本記事では、森林作業道の横断勾配や排水に関する基本的な考え方について、林野庁「森林作業道作設指針」も参考にしています。


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

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