【壊れない作業道シリーズ⑨】ヘアピンカーブ施工|急傾斜地で安全に標高を上げる
急傾斜地で森林作業道をつくるとき、直線的に斜面を上ろうとすると、縦断勾配が急になりすぎることがあります。
そこで使うのが、道を大きく折り返しながら標高を上げるヘアピンカーブです。
ヘアピンカーブは、単に道を大きく曲げればよいわけではありません。
通常の施工区間より切土・盛土が大きくなりやすいため、
・どこで折り返すか
・上下の路面高をどう調整するか
・谷側に必要な道幅をどう確保するか
・大量に出る土をどう動かすか
・水をどう逃がすか
を一体で考える必要があります。
この記事では、安芸太田町で実際に施工したヘアピンカーブをもとに、自伐型林業の現場で行っている施工の考え方を紹介します。
ヘアピンカーブとは

ヘアピンカーブとは、急傾斜地で作業道を大きく折り返しながら標高を上げるためのカーブです。
そのまま直進すると縦断勾配が急になる場所でも、適切な位置で折り返すことで、勾配を抑えながら斜面を上ることができます。
施工場所は、できるだけ地盤が安定し、カーブをつくるための広がりを確保できる場所を選びます。
特に、谷側へ張り出す路体を安定して支えられる地形かどうかが重要です。
折り返し部分だけを見るのではなく、
・上側の切土がどの程度になるか
・下側へどこまで安定して張り出せるか
・その先をどの勾配で上っていくか
まで見ながら位置を決めます。
カーブ半径は6.0~6.5mを一つの目安に
ヘアピンカーブでは、軽トラックや林内作業車が無理なく曲がれる半径を確保する必要があります。
カーブが小さすぎると、
・車両が一度で曲がれない
・内輪差で路肩へ寄りすぎる
・切り返しが増える
・路面や路肩を傷めやすい
といった問題が起こります。
当会では、軽トラックなどの通行を考え、現場条件にもよりますが、半径6.0~6.5m程度を一つの目安として施工しています。
ただし、数字だけで決めるものではありません。
地形や傾斜、通行する車両、積載する木材の長さなどを見ながら、その場所に必要なカーブ半径と道幅を確保します。
ヘアピン施工で重要なのは「土をどう動かすか」
ヘアピン施工では、通常の区間より大量の土を動かします。
施工効率と仕上がりを大きく左右するのが、
「いつ、どこの土を、どこへ動かすか」
という考え方です。
施工では、次の3つを意識します。
① 低い位置から谷側へ張り出す基礎をつくる
まず、あとから下側の路面高を調整しても必要な道幅を確保できるよう、谷側の低い位置から張り出しの基礎をつくります。
木組みが必要な場所では、できるだけ低い位置の安定した地山から施工を始めます。
施工が進み、大量の土を下へ送った後では、この低い位置にバックホーから手が届きにくくなるためです。
木組みを高い位置から始めると谷側への張り出しが不足し、下側の作業道に必要な幅を確保できなくなります。
また、下側の路面を必要以上に高くすることが目的ではありません。
上側との高低差を調整するために必要な範囲で路面を上げながら、安定した路体をつくります。
② 地山を掘り過ぎず、早く折り返しまで進む
次に重要なのが、途中の地山を必要以上に掘らないことです。
下側から外側の路体を丁寧につくりながら登ろうとすると、
- 地山を掘る
- 掘った土を、元の地山の位置とその外側に盛る
- 盛った土を締め固める
- その上を登るため、さらに上の地山を掘る
- また土を広げて盛る
という作業を繰り返すことになります。
こうすると、土が次第に平たく広がり、元の地山との高低差が大きくなっていきます。その高低差を埋めながら登るために、さらに上の地山を掘り、また土を動かすことになります。
結果として、本来動かす必要のない土まで何度も掘って、盛って、締め固めることになり、時間・燃料・労力を余計に使います。
ヘアピン施工では、安全にバックホーが進める幅を確保しながらも、途中の地山を掘り過ぎず、できるだけ少ない土の移動で折り返し地点まで進むことが重要です。
そして早い段階でバックホーの向きを変え、折り返し上部の土にバケットが届く位置を確保します。
③ 上側の土を下へ送り、上下の高低差を縮める
折り返し上部へバケットが届くようになったら、上側で発生する土を下へ送ります。
ここがヘアピン施工の大きなポイントです。
上側では、切土高や地盤の安定性を見ながら必要な範囲で路面高を下げます。
そこで出た土を下側へ送り、入口側の路面を必要な高さまでかさ上げします。
つまり、
上側の路面高を必要な範囲で下げる
↓
出た土を下へ送る
↓
下側の路面高を必要な範囲で上げる
↓
上下の高低差が小さくなる
↓
ヘアピン全体の縦断勾配が緩くなる
という考え方です。
下側の路面を上げると、その分だけ谷側へ必要な道幅を確保する必要があります。
そこで、最初につくった低い位置の基礎から谷側へ路体を張り出し、上から送った土を盛りながら十分に締め固めていきます。
ヘアピン施工では、単に「出口側を低くする」ことが目的ではありません。
上側と下側の両方から路面高を調整し、高低差を縮めることが重要です。
排水もヘアピン施工の重要なポイント
ヘアピンカーブでは、水をカーブへ集中させないことも重要です。
上側の作業道から流れてきた水は、可能な場所ではカーブへ入る手前で分散して逃がします。
また、自伐型林業の現場では、地形や水の流れに応じて、ヘアピン部分の路面に横断方向の勾配をつけ、水を外側へ排水する逆カントを利用することがあります。
前後の縦断勾配、水の流れ、排水先、路肩の状態、車両の走行などを見ながら、その場所に適した排水方法を選びます。
実際のヘアピンカーブ施工
今回紹介するのは、安芸太田町で実際に施工した森林作業道です。
この場所は急傾斜で、そのまま直進すると勾配が急になる地形でした。
そのため、まず右へカーブし、その先で左へ大きく折り返して標高を上げるルートとしました。
土質は真砂土です。
施工前


施工前には、折り返す位置だけでなく、その上下の路面高までイメージします。
上側をどの高さに仕上げるか、下側をどこまでかさ上げできるか、谷側への張り出しを安定して支えられるかを見ながら施工に入ります。
施工中


施工途中では、入口の外側を完成形までつくり込み過ぎず、なるべく早く折り返して上側の土にバケットが届く位置まで進みます。
そこから上側で出た土を下へ送り、入口側の路面をかさ上げしながら、上下の高低差を縮めていきます。
この現場では土質が真砂土のため、約30m手前の施工区間で発生した赤土も運び、路面や路肩の補強に利用しました。
完成したヘアピンカーブ


木組みを低い位置の安定した地山から施工することで、入口側の路面をかさ上げしても必要な道幅を確保できます。


上側の土をしっかり下へ送ることで、上側の路面高を調整するだけでなく、入口側の路面を必要な高さまで上げることができます。
この両方によって上下の高低差を縮め、縦断勾配を緩くします。

完成した作業道は、幅約2.5mです。
必要な場所では谷側へ張り出しをつくり、軽トラックや林内作業車が通行できる道幅を確保しています。
ヘアピンカーブ施工でよくある失敗
ヘアピンカーブでは、特に次のような失敗が起こりやすくなります。
勾配が急すぎる
上側と下側の路面高を十分に調整できていないと、上下の高低差が残り、縦断勾配が急になります。
上側だけを見るのではなく、下側の路面をどこまで上げられるかも重要です。
排水がない
カーブへ水が集中すると、路面の侵食や路肩の弱体化につながります。
カーブ手前での分散排水や、現場条件に応じた逆カント(横断勾配)などによって水を逃がします。
盛土が弱い
木組みを高い位置から始めると谷側への張り出しが不足し、必要な道幅を確保できません。
低い位置の安定した地山から基礎をつくり、盛土を十分に締め固めることが重要です。
カーブ半径が小さい
半径が小さすぎると車両が曲がりにくくなり、切り返しや路肩への負担が増えます。
当会では、現場条件に応じて半径6.0~6.5m程度を一つの目安としています。
大量に出る土を下ろしきれていない
ヘアピン施工では、折り返し上部の切土によって大量の土が発生します。
この土を十分に下へ送らないと、上側の路面高を適切に調整できないだけでなく、下側の路面も必要な高さまで上げることができません。
その結果、上下の高低差が残り、ヘアピン全体の縦断勾配が急になります。
また、下側から外側を丁寧につくり込み過ぎると、地山を掘っては盛り、締め固める作業を繰り返すことになり、不必要に土を何度も動かすことになります。
ヘアピンでは、
・低い位置から張り出しの基礎をつくる
・途中の地山を必要以上に掘らない
・できるだけ早く折り返して上側の土にバケットを届かせる
・上側の土を下へ送り、入口側の路面を必要な高さまで上げる
という順序を意識することが、効率よく安定した道をつくるポイントです。
まとめ|ヘアピンは上下の高低差をどう縮めるかが重要
ヘアピンカーブは、急傾斜地で作業道を折り返しながら標高を上げるための施工です。
ポイントは、単に大きなカーブをつくることではありません。
上側の路面高を必要な範囲で調整し、そこで出た土を下へ送り、下側の路面を必要な高さまでかさ上げする。
そうすることで上下の高低差を縮め、ヘアピン全体の縦断勾配を緩くします。
そのためには、
・下側の張り出しを安定して支えられる場所を選ぶ
・低い位置から谷側への張り出しの基礎をつくる
・途中の地山を必要以上に掘らない
・早く折り返して上側の土にバケットを届かせる
・大量に出る土を下方へ送り、入口側の路面高を調整する
・通行車両に合ったカーブ半径を確保する
・地形に応じて排水や逆カント(横断勾配)を使う
ことが重要です。
ヘアピン施工では、地形、土、路面高、道幅、水の流れを一体で見ながら、必要以上に土を動かさず、その場所に合った形へ整えていくことが、長く使い続けられる作業道につながります。
「壊れない作業道」という表現について
本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土とこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。
これは、どのような豪雨や災害でも「絶対に壊れない」という意味ではありません。
地形・地質・土質・水の流れなど、その場所の条件を見ながら適切に施工し、施工後も点検・維持管理を続けることが前提です。
参考資料
- 広島県「森林作業道作設指針」
掲載ページ:広島県「森林作業道の作設について」 - 広島県「森林作業道実施基準」
掲載ページ:広島県「森林作業道の作設について」
この記事の執筆・監修
久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事
広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。
自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M
関連記事|壊れない作業道シリーズ
作業道づくりや森林管理に関心のある方へ
山林の管理や森林整備についてのご相談を受け付けています。
作業道づくりを現場で学びたい方は、見学会・研修の案内をご覧ください。

