【壊れない作業道シリーズ⑫】支障木伐採|谷側へ傾いたヒノキを予定方向へ誘導した牽引伐倒

森林作業道を開設していると、予定する路線上の立木を伐採しなければならないことがあります。

しかし、支障木は必ずしも倒しやすい方向に立っているとは限りません。

今回の現場では、谷側へ大きく傾いたヒノキを、傾いている方向から約90度横の作業道側へ伐倒する必要がありました。

周囲には立木が密集し、谷側方向には電線もあります。

そこで、木の傾きや周囲の立木、伐倒後の処理まで確認したうえで、ロープと滑車を使って牽引しながら予定方向へ誘導しました。

この記事では、安芸太田町の実際の森林作業道開設現場で行った支障木伐採の一例を紹介します。

今回の現場条件

谷側へ大きく傾いたヒノキと周囲の立木。森林作業道開設前の支障木伐採現場
谷側へ大きく傾いたヒノキ。周囲には立木が密集し、谷側方向には電線がある現場でした。

今回伐採したのは、40年弱のヒノキ林にある支障木です。

対象木は谷側へ強く傾いており、そのまま伐倒すると谷方向へ倒れやすい状態でした。

しかし、

・谷側方向には電線がある
・周囲には枝掛かりする可能性のある立木がある
・谷側へ倒すと伐倒後の処理が難しい
・開設した作業道側へ倒した方が、その後の造材・搬出を行いやすい

という条件がありました。

そのため今回は、木が自然に倒れようとする方向ではなく、作業道側を予定する伐倒方向として検討しました。


伐倒する前に方法を決める

今回の作業そのものは約30分でした。

ただし、短時間で作業できた理由は、現場に来てから方法を考えたからではありません。

前回の作業終了時に、対象木と周囲を確認しながら、

・どの方向へ倒すか
・どの高さにロープを掛けるか
・どの立木を支点として使うか
・どこから牽引するか
・どのような道具が必要か

を作業者同士で検討していました。

そのうえで、

・スローラインを使って高い位置へロープを設置する
・スリングとリギングプーリーで支点をつくる
・作業道側から牽引する

という方法を決めました。

帰宅後にはロープ長や必要な道具、作業手順を再確認し、当日も作業者同士で手順と役割を確認してから作業を始めました。

伐倒では、チェーンソーを入れてから考えるのではなく、切る前にできるだけ危険要因と作業手順を整理しておくことが重要です。


使用した道具

支障木の牽引伐倒に使用したスローライン、スローバッグ、リギングロープ、スリング、リギングプーリー
今回使用したスローライン・スローバッグ、リギングロープ、スリング、リギングプーリー。

今回使用した主な道具は、

・スローライン・スローバッグ
・リギングロープ(12mm×60m)
・スリング(75mm×4m)
・リギングプーリー

です。

対象木は谷側へ大きく傾いていたため、低い位置から引くのではなく、できるだけ高い位置にロープを掛け、予定方向へ力を伝えやすくしました。

現場では、手元にある道具だけで無理に対応するのではなく、作業方法を決めてから、それに必要な道具を準備することが大切です。

高い位置から予定方向へ牽引する

ヒノキの高い位置にロープを掛け、立木に設置したリギングプーリーを介して牽引準備をしている様子
スローラインを使って対象木の高い位置へロープを設置し、リギングプーリーを介して牽引の準備を行いました。

まず、スローラインとスローバッグを使って対象木の高い位置へロープを通しました。

次に、立木へスリングとリギングプーリーを設置し、牽引方向を調整します。

今回のポイントは、谷側へ傾いているヒノキを、傾いている方向から約90度横にある作業道側へ誘導することでした。

そのため、

・対象木の傾き
・枝張り
・ロープを掛ける高さ
・支点の位置
・牽引方向
・受け口の方向
・木が動き始めるタイミング

などを確認しながら作業を進めました。


伐倒者と重機オペレーターが連携する

牽引用ロープを掛けたヒノキの追い口をチェーンソーで切っている伐倒作業の様子
牽引状態を確認しながら伐倒作業を行う様子。伐倒者と重機オペレーターの連携が重要です。

牽引を使った伐倒では、ロープを引けば予定方向へ倒れるというものではありません。

伐倒者は、

・受け口の方向
・追い口
・残す部分
・木の動き

を確認し、重機オペレーターと合図を合わせながら作業を進めます。

特に今回のように大きく偏心した木では、伐倒者と牽引側がそれぞれ別々に判断するのではなく、作業前に手順と合図を共有しておくことが重要です。


予定した作業道側へ伐倒

谷側へ傾いていたヒノキを牽引し、森林作業道側へ伐倒した直後の様子
谷側へ傾いていたヒノキを、予定していた作業道側へ伐倒しました。
谷側方向へ流れることなく、予定した作業道側へ倒れたヒノキ。
谷側方向へ流れることなく、予定した作業道側へ倒れたヒノキ。

結果として、対象木は谷側へ流れることなく、予定していた作業道側へ伐倒することができました。

周囲の立木への大きな損傷もなく、その後の造材・搬出作業へつなげることができました。

その後、同じ現場の支障木3本についても、一本ごとに状態を確認しながら同様の方法で処理しました。


支障木処理で重要なのは「切る前の判断」

支障木を予定方向へ伐倒した後の森林作業道開設現場
同じ現場で支障木を処理した後の様子。事前に伐倒方向と作業方法を決めてから作業を進めました。

立木は一本一本状態が違います。

同じヒノキでも、

・幹の傾き
・枝の付き方
・周囲の立木
・地形
・風
・伐倒後に木が動く方向
・造材や搬出の方法

によって、適切な伐倒方法は変わります。

そのため重要なのは、特定の伐倒方法をそのまま当てはめることではありません。

まず木と周囲の状況を確認し、その現場で無理のない方法を考えることです。

伐倒はチェーンソーで木を切る作業だけではなく、木がどの方向へ動こうとしているのかを読み、安全に作業できる方法を組み立てる作業でもあります。


作業道づくりでは、支障木の処理も重要

森林作業道というと、

・ルート選定
・縦断勾配
・切土・盛土
・排水
・ヘアピンカーブ

などに目が向きます。

しかし、実際の施工では予定する路線上の木をどのように処理するかも重要です。

無理な伐倒によって掛かり木になったり、残す木を傷つけたりすれば、その後の施工にも影響します。

さらに、伐倒した木を作業道側へ倒すことができれば、その後の造材や搬出もしやすくなります。

森林作業道づくりでは、道だけを見るのではなく、伐倒から造材、搬出まで含めて作業全体を考えることが大切です。

安全上の注意

この記事で紹介しているのは、特定の現場条件で実施した支障木伐採の一例です。

立木の傾き、樹高、枝張り、周囲の立木、地形、風、電線などの条件によって危険性や適切な作業方法は大きく異なります。

実際の伐木作業では、関係法令や安全基準を確認し、必要な教育を受けたうえで、

・立木と周囲の状況の確認
・安全な伐倒方向の検討
・退避場所と退避ルートの確保
・立入禁止区域の設定
・作業者間の合図と役割分担

などを行う必要があります。

また、重機や牽引具を使用する場合は、機械・器具の能力や使用条件を確認し、その現場に適した安全な方法を選択してください。

電線などの設備に接触するおそれがある場合は、自己判断で作業を進めず、必要に応じて設備管理者等と事前に協議することが重要です。

まとめ

今回の現場では、谷側へ大きく傾いたヒノキを、傾いている方向から約90度横の作業道側へ伐倒する必要がありました。

そこで、

・対象木と周囲の状況を事前に確認する
・伐倒方向を決める
・高い位置へロープを設置する
・支点を使って牽引方向を調整する
・作業者同士で手順と合図を共有する

という準備を行い、予定した方向へ伐倒しました。

支障木伐採で重要なのは、単にチェーンソーで木を切る技術だけではありません。

木の状態と現場条件を読み、切る前に安全な作業方法を組み立てること。

それが、その後の作業道開設や造材・搬出を円滑に進めることにもつながります。

「壊れない作業道」について

本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土とこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。

これは、どのような条件でも絶対に壊れないという意味ではありません。

地形・土質・降雨条件などによって状態は異なるため、施工後も点検と必要な補修を行いながら維持管理していくことが重要です。

参考資料


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

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