【壊れない作業道シリーズ⑨】支障木伐採|谷側へ傾いた木を安全に倒す「牽引伐倒技術」

谷側へ大きく重心が流れたヒノキ。

周囲は密な立木。
谷側方向には電線。

単純に伐倒すれば、枝掛かりや想定外の方向に倒れるリスクがある現場でした。

今回の現場は、40年弱のヒノキ林。

対象木は谷側へ強く傾いており、そのままでは谷方向へ倒れやすい状態でした。

しかし今回は、

  • 谷側方向には電線がある
  • 周囲は枝掛かりしやすい条件
  • 谷へ倒すと処理が難しい

という状況だったため、

「木が倒れたい方向」

ではなく、

「安全に倒せる方向」

へ制御する必要がありました。

そこで今回は、

  • スローライン・スローバッグ
  • リギングプーリー
  • バックホー牽引

を組み合わせ、これまで開設してきた作業道方向へ90度横方向に伐倒しました。

伐倒前の状況

谷側へ大きく重心が流れたヒノキ(中央)
周囲は密な立木で、谷側方向には電線がある現場だった


なぜ短時間で安全に伐倒できたのか

今回の伐倒作業自体は、約30分ほどで完了しました。

しかし、これは単純に「早かった」という話ではありません。

実際には、前回の作業終了時点で、

  • どの方向へ倒すか
  • どこへロープを掛けるか
  • どの木を支点にするか
  • どこから牽引するか

を、作業員全員で現場を見ながらすでに検討していました

今回の条件では、

  • 作業道方向へ90度横方向に倒す
  • スローラインで高所へロープを掛ける
  • リギングプーリーで支点を取る
  • バックホーで牽引する

という方法を、ほぼ決めた状態で作業を終えていました。

帰宅後も、

  • 必要な道具
  • ロープ長
  • 作業順序
  • 役割分担

をイメージしながら準備。

当日は、お互いの認識を再確認した上で作業に入りました。

その結果、無理な動きや迷いが少なく、スムーズに伐倒を完了することができました。


使用した道具

左から、スローライン・バッグ、リギングロープ(12mm×60m)、スリング(75mm×4m)、リギングプーリー

今回の現場では、

  • 高所へロープを掛ける
  • 横方向へ牽引する
  • 重心に逆らって倒す

という作業を想定して道具を準備しました。

現場で重要なのは、

「ある道具で何とかする」

のではなく、

「必要な道具を事前に揃える」

ことです。

今回のような伐倒では、ロープ長や支点構築を含めた事前準備が、安全性と作業効率に直結します。

スローラインと牽引で重心に逆らう

まず、スローラインとスローバッグを使用して高所へロープを設置。

高い位置へロープを掛けることで、横方向への力を効かせやすくなります。

その後、スリングとリギングプーリーで支点を構築し、バックホーで牽引。

ポイントは、

谷側へ傾いた木を、
水平方向へ90度変えて倒す

ことでした。

このような伐倒では、

  • ロープ位置
  • 支点角度
  • テンション
  • 受け口
  • 追い口
  • 牽引タイミング

のバランスが重要になります。


牽引準備の様子

スローラインで高所へロープを設置
リギングプーリーで支点を取り、バックホー牽引の準備を行う


追い口作業

牽引テンションを確認しながら追い口を入れる
伐倒者と重機オペレーターの連携が重要になる

牽引伐倒では、単純にロープを引くだけでは安全に倒せません。

  • 受け口の方向
  • 追い口の位置
  • 木の動き
  • テンションの掛かり方

を確認しながら、伐倒者と重機オペレーターがタイミングを合わせていきます。

特に今回のような重心木では、

「どの瞬間に木が動き始めるか」

を読むことが重要になります。


予定方向へ安全に伐倒

枝掛かりや電線方向への流れもなく、狙った方向へ処理を完了
谷側へ流れる重心に逆らい、作業道方向へ安全に伐倒

結果として、ヒノキは予定通り、作業道方向へ安全に伐倒。

枝掛かりや電線方向への流れもなく、無事処理を完了しました。

その後、同じ方法でさらに3本を伐倒。

周囲の残存木へのダメージも最小限に抑えることができました。


同じ方法でさらに3本を処理

同じ方法でさらに3本を処理
事前シミュレーションと認識共有により、スムーズに作業を進めることができた

重心を読む

谷側へ傾いた木は、見た目以上に重心が流れています。

特に今回のような条件では、

  • 木の傾き
  • 枝張り
  • 周囲の立木
  • 木が動き出す方向

を読むことが重要になります。

伐倒は単に切る技術ではなく、

「木の動きを読む技術」

でもあります。


「壊れない作業道」は、木の倒し方から始まる

作業道というと、

  • 勾配
  • 路線選定
  • ヘアピンカーブ
  • 排水

に注目されがちです。

しかし実際には、

一本の木をどう倒すか

も、道づくりの安全性や作業効率に大きく関わっています。

無理な伐倒は、

  • 掛かり木
  • 危険木
  • 作業停止
  • 周囲の木の損傷

につながります。

だからこそ、自伐型林業では、

「安全に、森を壊さず、次の作業につなげる」

という視点で支障木処理を行います。


まとめ

今回の現場では、

  • 谷側へ重心が傾いたヒノキ
  • 電線リスク
  • 枝掛かりリスク
  • 密な立木条件

という難しい条件の中、

  • スローライン・バッグ
  • リギングプーリー
  • バックホー牽引
  • 事前シミュレーション
  • 作業者同士の認識共有

を組み合わせ、安全に予定方向へ伐倒することができました。

壊れない作業道は、排水や路面だけでできるものではありません。

一本の支障木をどう処理するか。

そこにも、森を壊さず、長く使える道を残す思想が表れています。

事務局 久保谷

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