森林に繰り返し入り、間伐を行い、木を搬出する。
その仕事を長く続けるための基盤となるのが、森林作業道です。
一般社団法人安芸太田町自伐型林業を推進する会では、安芸太田町の実際の森林で、地形・土・水の状態を見ながら、山への負担をできるだけ抑え、長く使い続けられる作業道づくりに取り組んでいます。
この「壊れない作業道シリーズ」では、ルート選定、勾配、切土・盛土、排水から、ヘアピンカーブ、木組み、抜根、支障木伐採、岩盤掘削まで、実際の施業現場をもとに13の記事で紹介しています。
まず「壊れない作業道」の考え方を知りたい方は、「壊れない作業道とは」をご覧ください。
※本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土やこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。「絶対に壊れない」という意味ではなく、施工後も点検・補修を行いながら長く使い続けることを前提としています。
このシリーズの読み方
①〜⑦は、森林作業道を計画・施工するうえで基本となる考え方をまとめています。
初めて作業道づくりを学ぶ方は、①から⑦まで順番に読むと、ルート選定から勾配、土工、排水までのつながりを理解しやすくなります。
⑧〜⑬は、沢、急カーブ、大きな岩、根株、支障木、岩盤など、実際の施工現場で出会う条件への対応事例です。
⑧〜⑬は施工順序を示すものではありません。現場条件や知りたい内容に合わせて、必要な記事からご覧ください。

第1章|作業道を計画する
① 森林作業道の基本
森林管理を続けるための「道」の役割を知る

森林作業道は、木を搬出するためだけの道ではありません。
森林に繰り返し入り、間伐や森林整備を続けるための基盤です。
必要最小限の幅員、地形に合わせたルート、切土・盛土、排水、維持管理など、シリーズ全体の基本となる考え方を紹介します。
② なぜ森林作業道は壊れるのか
壊れる原因を知ることから始める

作業道の損傷や崩壊には、雨水、路線選定、道幅、勾配、切土・盛土、土質、施工後の維持管理など、さまざまな要因が関係します。
安芸太田町に多い真砂土での事例も交えながら、崩壊につながる主な原因を整理します。
③ ルート選定
地形と水を読み、無理のない道を通す

作業道づくりでは、施工を始める前のルート選定が重要です。
幹線は尾根、支線は等高線に沿うことを基本に、地形、水の流れ、土質、傾斜などを確認しながら、大きな切土や盛土をできるだけ避けられるルートを考えます。
第2章|道の形を決める
④ 縦断勾配
急勾配を避け、水を長く流さない

道を進む方向の傾きが「縦断勾配」です。
重要なのは、単に車両が登れる勾配にすることではありません。
地形や走行条件、水の集まり方を見ながら、急勾配が長く続くことを避け、波形の線形と分散排水を組み合わせて考えます。
⑤ 横断勾配(路面排水)
原則水平を基本に、地形に応じて使い分ける

路面の横断勾配は、原則として水平を基本とします。
一方、地形や土質、水の流れ、排水先などによっては、横断勾配を利用して路面水を逃がす方法が有効な場合もあります。
「何%つけるか」だけではなく、「水をどこへ安全に逃がすか」という視点から考えます。
⑥ 切土・盛土の基本
地山を活かし、必要以上に山を動かさない

作業道をつくるためには、山側を削る切土と、谷側に土を置く盛土が必要になります。
当会では、使用する機械や現場条件に合わせて道幅を必要最小限に抑え、切土・盛土を小さくしながら、安定した路体をつくることを重視しています。
盛土の基礎づくりや締固めなど、実際の施工をもとに解説します。
第3章|水を処理する
⑦ 作業道排水の基本
水を集めず、長く流さず、分散して逃がす

森林作業道を長く使ううえで、特に重要なのが水の処理です。
路面の雨水だけでなく、山側から流れ込む地表水や湧水なども確認し、水がまとまった流量になる前に、こまめに分散して排水します。
排水口だけではなく、その先の斜面や水の流れまで考えることが重要です。
⑧ 洗い越し施工
水の通り道を無理に止めない

作業道が枯れ沢や水の流れる地形を横断する場合、水の通り道そのものを活かして道をつくる「洗い越し」が有効な場合があります。
実際の枯れ沢を直角に横断した施工例から、水を安全に通すための考え方と施工を紹介します。
第4章|現場条件に対応する
森林の地形や地質、立木の状態は、一つとして同じではありません。
基本となる考え方を踏まえたうえで、現場に現れるさまざまな条件に合わせて施工方法を判断します。
⑨ ヘアピンカーブ施工
急傾斜地で安全に標高を上げる

斜面を登るために必要になることがあるのが、ヘアピンカーブです。
カーブ部分では切土や盛土が大きくなりやすいため、完成する路面の高さやカーブの大きさ、排水まで考えながら施工する必要があります。
実際の施工例から、安定したヘアピンカーブをつくるためのポイントを紹介します。
⑩ 岩を避ける木組み工法
大きな岩を無理に動かさず、地形を活かして道を通す

作業道の予定ルート上に大きな岩が現れても、必ず取り除く必要があるとは限りません。
実際の施工例では、岩を残したまま、その周囲に木組みを施工して谷側の盛土を支え、必要な路幅を確保しました。
現場の地形や障害物を活かしながら道を通す一つの方法を紹介します。
⑪ 抜根技術
根の張り方を読み、必要以上に掘らない

作業道のルート上にある支障木を伐採した後、施工の支障となる根株を抜く場合があります。
根株の周囲を力任せに掘るのではなく、根の張る方向や太さを見ながら必要な根を切り、地山を必要以上に崩さずに抜根する考え方を紹介します。
⑫ 支障木伐採
谷側へ傾いたヒノキを牽引して予定方向へ誘導した事例

作業道の予定ルート上には、施工前に伐採しなければならない立木があります。
今回の現場では、谷側へ大きく傾いたヒノキを、ロープと滑車を使って牽引しながら、傾いている方向から約90度横の予定方向へ誘導しました。
木の傾き、周囲の立木、伐倒後の処理まで確認して行った支障木伐採の実例を紹介します。
⑬ 岩盤掘削
硬い岩盤に当たったとき、どう道を通すか

作業道を施工していると、バックホーだけでは掘り進めにくい硬い岩盤に当たることがあります。
今回の現場では、バックホー、エンジン式コンクリートブレーカー、ツルハシを使い分けながら掘削しました。
硬い岩盤に当たったときの判断と、実際の施工方法を紹介します。
作業道づくりは、一つの技術だけでは成り立たない
壊れにくい作業道は、排水だけを施工すればできるわけではありません。
ルート選定で地形と水を読み、無理のない勾配を考え、必要最小限の切土・盛土で路体をつくり、水が集まる前に分散して逃がす。
さらに、沢、大きな岩、根株、支障木、岩盤など、その場所に現れる条件に合わせて施工方法を判断します。
そして、完成した後も状態を確認し、必要に応じて排水箇所の清掃や路面・路肩の補修を行います。
計画、施工、排水、現場での判断、点検・補修。
これらを一つにつなげて考えることが、長く使い続けられる森林作業道づくりにつながります。
作業道は、森を育て続けるための基盤
私たちが目指しているのは、道をつくることそのものではありません。
作業道を使って森林に入り、間伐を行い、木を搬出し、残した木を育てる。
そして数年後、再び同じ森林に入り、森の成長を見ながら手入れを続けていく。
その循環を支えるのが森林作業道です。
一度つくって終わるのではなく、次の間伐にも、その次の間伐にも使える道を残すことが、100年先を見据えた森づくりにつながると考えています。
安芸太田町の現場から技術を発信します
「壊れない作業道シリーズ」では、安芸太田町の実際の森林で行っている施工を記録し、紹介しています。
地形、地質、土質、立木、水の流れは現場ごとに異なります。
一つの工法や数値をそのまま当てはめるのではなく、基本となる考え方を踏まえ、その場所に合わせて判断することが大切です。
本シリーズで紹介する施工方法や数値には、当会の現場での実践例や実務上の目安を含みます。実際の森林作業道の計画・施工では、地形・地質・土質・降水・使用する機械などの条件を確認し、関係法令や適用される作設指針・基準に沿って判断してください。
参考資料
林野庁「森林作業道作設指針」
掲載ページ:林野庁「路網整備の推進」
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