【壊れない作業道シリーズ①】森林作業道の基本|自伐型林業の道づくり

森林に繰り返し入り、間伐を行い、木を搬出する。その仕事を長く続けるための基盤が、森林作業道です。

私たちは安芸太田町で、地形や水の流れに配慮し、山への負担を抑えながら、壊れにくく長く使える作業道づくりに取り組んでいます。

※本シリーズの「壊れない作業道」は、地形に合わせた計画・施工と継続的な維持管理によって、壊れにくく長く使える道を目指す考え方を表しています。災害や損傷が起きないことを保証するものではありません。

木々の間を緩やかに曲がりながら続く森林作業道
木々の間を通る森林作業道。森林への出入りや手入れを続けるための基盤になります。

この記事でわかること

  • 森林作業道の役割と、林道との違い
  • 当会が作業道づくりで重視していること
  • 必要最小限の幅員を考える理由
  • 地形・土・水に応じた道づくりの基本
  • 長期利用を支える点検と補修

森林作業道とは

森林作業道は、間伐や木材の集材・搬出など、森林内の作業を支えるための道です。主に林業機械が通行し、林道などと組み合わせて利用します。

自伐型林業では、同じ森林に繰り返し入り、木の成長を見ながら間伐を続けていきます。そのため当会では、作業道も継続的に利用することを前提に計画しています。

道をつくること自体が目的ではありません。森林の手入れを続け、伐った木を活かし、残した木を育てていくための基盤を整えることが目的です。

森林作業道と林道の違い

林道と森林作業道は、どちらも森林の整備や木材の利用を支える道です。

林道は、森林へのアクセスや木材の運搬など、路網の骨格となる役割を担います。森林作業道は、林道などから施業する場所へつながり、林業機械による森林内の作業を支えます。

実際の幅員や構造は、道の区分、利用する車両、地形などによって異なります。林道がすべて大型車両向けというわけでも、森林作業道が短期間だけ使う道というわけでもありません。

大切なのは、森林をどう管理し、どの機械で作業するかに合わせて、必要な道を組み合わせることです。

当会が重視している作業道づくり

当会では、小型の機械を使って間伐と搬出を繰り返す施業に合わせ、次の考え方を重視しています。

重視すること道づくりで考えること
必要最小限の幅員使用する機械の安全な通行と作業に必要な幅を確保し、むやみに広げない
地形に合わせたルート斜面の形や地盤、水の集まり方を確認し、無理の少ない場所を選ぶ
切土・盛土の抑制山を削る量、土を盛る量を抑え、安定した路体をつくる
分散排水路面の水を長い距離流さず、排水先の斜面も確認して分散させる
長期利用次の間伐や搬出にも利用できるよう、施業の進め方と一緒に計画する
維持管理利用前や大雨の後などに、安全を確保して点検し、必要な補修を行う

これらは、ほかの林業の道づくりにも共通する考え方です。当会では、自分たちの施業規模と現場条件に合わせて実践しています。

なぜ必要最小限の幅員を重視するのか

山側の切土面と谷側の立木の間に通した作業道と、黒い軽自動車
軽自動車が入った森林作業道。道幅は、使用する車両や機械、現場条件に合わせて確保します。

当会では、小型機械を使う施業に合わせ、幅員約2.5mを基本とした作業道づくりに取り組んでいます。

斜面で道幅を広げると、地形によっては山側を削る量や谷側に盛る土の量が増えます。そのため、必要以上に幅を広げないことが、地形の改変を抑えるうえで大切になります。

ただし、狭ければよいわけではありません。

使用する機械の幅、積載状態、カーブでの通行、路肩の強さ、作業に必要な空間などを考え、安全に使える幅を確保する必要があります。曲線部などでは、追加の幅が必要になる場合もあります。

約2.5mという数値だけを、すべての現場に当てはめることはできません。山への負担と作業の安全性を、両方確認しながら判断します。

壊れにくい道づくりの3つのポイント

森林作業道の基本構造図。施工前の地表面を破線で示し、山側の切土と谷側の盛土、その下の地山を区別。右の平面図は、路面の水を複数箇所から谷側へ分散して排水する考え方を示す。
森林作業道の切土・盛土と、排水の考え方を示した概念図。破線は施工前の地表面を表しています。幅員約2.5mは当会の例であり、寸法や施工方法は使用する機械と現場条件に応じて判断します。

① 地形と地盤を読み、無理の少ないルートを選ぶ

施工前に、斜面の形、地質や土質、湧水、沢、崩れた跡などを確認します。

大きな切土や盛土が必要になる場所、水が集まりやすい場所、不安定な地盤などを把握し、できるだけ無理の少ないルートを探します。

地形に沿って道を通すことは重要ですが、カーブさせるだけで排水や安定性が確保できるわけではありません。道の勾配や排水する場所も、ルートと一緒に考えます。

② 切土・盛土を抑え、安定した路体をつくる

山側を削ることを「切土」、土を盛ることを「盛土」、車両の荷重を支える道の本体を「路体」といいます。

必要以上の切土や大きな盛土を避けながら、使用する機械を支えられる路体をつくります。

盛土は、それ自体が悪いわけではありません。土の性質や水分、地盤の状態を確認し、適切な施工と締固めを行うことが重要です。見た目の道幅が確保できていても、路肩まで十分な強さがあるとは限りません。

③ 水を集中させず、排水先まで確認する

森林作業道の路面を斜めに横切り、谷側へ続く浅い排水のくぼみ
路面の水を道の外へ逃がすために設けた、浅い横断排水の例。水の出口だけでなく、排水先の斜面の状態も確認することが大切です。

雨水や湧水は、路面の侵食や路体・斜面の不安定化に関わる重要な要因です。

路面に水をためないこと、長い距離を流し続けないこと、適切な場所で分散して排水することを考えます。

ただし、道の外へ水を出せばよいわけではありません。排水先が崩れやすい斜面であれば、その場所の侵食や崩壊につながるおそれがあります。

路面だけでなく、道の上側から入ってくる水と、排水した後の流れまで確認することが大切です。

施工後も、点検と補修を続ける

作業道の状態は、施工直後だけでは判断できません。降雨や繰り返しの通行によって変化するため、使いながら確認していきます。

点検では、次のような変化に注意します。

  • 路面に溝ができたり、水がたまったりしていないか
  • 排水箇所が土砂や落ち葉などで詰まっていないか
  • 路肩に沈下や亀裂がないか
  • 切土面に崩れや落石の兆候がないか
  • 排水先の斜面が侵食されていないか

大雨の後の点検は、雨がやみ、現地へ入れる状況かを判断してから行います。異常がある場所は通行を控え、状態に応じて補修やルートの見直しを検討します。

壊れにくい作業道づくりには、施工だけでなく、その後の維持管理も含まれます。

安芸太田町で、森を育て続けるために

安芸太田町の施業現場では、急な斜面や岩盤、水の集まる地形など、場所ごとに異なる条件に向き合います。

一つの施工方法をどこでも使うのではなく、その場所の地形・土・水を見て判断することを大切にしています。

作業道を使って森林に入り、間伐を行い、木を搬出する。そして、残した木の成長を見ながら、再び手入れをする。

作業道は、こうした森林管理を支える基盤です。道があるだけで森が育つわけではありませんが、継続的に手を入れられることが、長い時間をかけた森づくりにつながります。

私たちは100年先の森を見据え、山への負担を抑えながら、点検と補修を重ねて使い続けられる道づくりに取り組んでいます。

※この記事は、森林作業道づくりの基本的な考え方と当会の実践を紹介するものです。実際の計画・施工では、使用する機械、地形・地質・土質、降雨や湧水などの条件を確認し、関係法令や適用される作設指針・基準に沿って判断してください。

大きな木々と下層植生に囲まれた道を、作業者が歩く将来の森のイラスト
手入れを続けながら目指す、将来の森のイメージ。実際の施業地や、一定年数後の姿を示すものではありません。

このシリーズの考え方と参考資料

本シリーズでは、安芸太田町で行う森林作業道づくりについて、当会が現場で重視している考え方と施工事例を紹介しています。

路線計画や施工方法を検討する際は、林野庁「森林作業道作設指針」および広島県「広島県森林作業道作設指針」を参考にしています。

森林作業道の計画・施工は、地形、地質、土質、水の流れ、利用目的、関係する法令・基準などに応じて、現地ごとに検討が必要です。本文中で紹介する数値や施工方法は、すべての現場に一律に適用できるものではありません。

このシリーズでいう「壊れない作業道」は、絶対に壊れない道という意味ではありません。地形と水の流れに配慮し、必要以上に山を削らず、施工後も点検・補修を行いながら、壊れにくく長く使い続けることを目指す考え方です。

参考資料

・林野庁「路網整備の推進について(森林作業道作設指針)」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sagyoudo/romousuisin.html

・広島県「森林作業道の作設について(広島県森林作業道作設指針)」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/86/shinrinsagyoudou.html


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

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