【壊れない作業道シリーズ⑦】作業道排水の基本|水を集めず、長く流さず、分散して逃がす
森林作業道を長く使い続けるために、特に重要なのが水の処理です。
作業道の損傷や崩壊には、ルート選定、地形・地質、切土・盛土、締固めなどさまざまな要因が関係します。
その中でも、雨水などが一か所に集まり、路面や路肩を長く流れることは、路面侵食や路体の弱体化につながる大きな要因です。
排水で大切なのは、単に「水を外へ出す」ことではありません。
水を集めない。
長く流さない。
少量のうちに、安全な場所へ分散して逃がす。
自伐型林業の作業道では、この考え方を基本に、地形や水の流れを読みながら道をつくります。
※森林作業道の施工方法は、地形・地質・土質・気象条件等によって異なります。本記事では、自伐型林業の現場で実践している考え方を中心に、林野庁・広島県の森林作業道作設指針も踏まえて紹介します。
排水は「道をつくった後」に考えるものではない
作業道の排水というと、道を施工した後に排水溝をつくることをイメージするかもしれません。
しかし、実際にはルートを決める段階から排水は始まっています。
どこから水が来るのか。
どこへ流れているのか。
どこなら安全に逃がせるのか。
こうした水の動きを見ながら道の線形を決めます。
一定の勾配で長く上り下りする道では、水も同じ方向へ長く流れやすくなります。
そのため、地形に沿って縦断勾配を緩やかに変化させる「波形勾配」を利用し、水がまとまった流量になる前にこまめに排水します。
→ 【壊れない作業道シリーズ④】縦断勾配|急勾配を避け、水を長く流さない
排水の基本は「水を集めない・長く流さない」
森林作業道で意識したい水には、路面に直接降った雨だけでなく、山側から流れ込む地表水や湧水、もともと谷や沢を流れている水があります。
こうした水を一か所へ集めてしまうほど、水量と流速が増え、路面や盛土を侵食する力も大きくなります。
そこで重要になるのが、
「たくさん集めてから排水する」のではなく、
少量のうちに何度も分散して逃がす
という考え方です。
排水施設の数や間隔を一律に決めるのではなく、縦断勾配、区間の長さ、周囲から流れ込む水の量、集水範囲、土質、排水先の状態などを見ながら判断します。
路面の横断勾配は「原則水平」が基本
林野庁や広島県の森林作業道作設指針では、土構造を基本とする森林作業道について、路面の横断勾配は原則として水平とし、縦断勾配を緩やかな波形にして、こまめに分散排水する考え方が示されています。
一方、自伐型林業の実際の現場では、地形、土質、水の流れ、排水先などを見ながら、必要な場所では横断勾配による路面排水も利用します。
当会では、そのような場合に3〜5%程度を一つの実務上の目安としています。
ただし、これは作業道全体を一律に谷側へ傾けるという意味ではありません。
特にカーブでは、排水だけでなく車両の走行安全性も考えて路面形状を判断する必要があります。
大切なのは、「何%つけるか」ではなく、
この水をどこへ安全に逃がすか
を考えることです。
→ 【壊れない作業道シリーズ⑤】横断勾配(路面排水)|原則水平を基本に、地形に応じて使い分ける
横断排水は、水が集まる前につくる
路面を水が長く流れると、わだちや凹みに水が集中し、路面を削る原因になります。
そのため、水がまとまった流量になる前に、横断排水や地形・カーブを利用して路外へ逃がします。
林野庁や広島県の指針では、排水間隔を一律の距離で決めるのではなく、縦断勾配や集水範囲などを見て判断する考え方が示されています。
一方、自伐型林業の現場では、排水間隔20〜30m程度を一つの実務上の目安とし、地形・勾配・水量・土質・排水先の状態に応じて、必要ならさらに短い間隔で排水します。
大切なのは、水を長く流さず、少量のうちにこまめに分散することです。

排水は「出口の先」まで考える
水を路外へ出せば排水が終わるわけではありません。
むしろ重要なのが、排水した水がその先で何をするかです。
谷側へ排水した水が一か所へ集中し、盛土法面を削ったり、不安定な斜面へ流れ込んだりすれば、排水そのものが新しい侵食の原因になります。
そのため、
排水先の地盤が安定しているか。
水が一か所へ集中しないか。
盛土や法面を侵食しないか。
排水した水が、その先の沢や保全対象に影響しないか。
まで確認します。
必要に応じて石などで水勢を弱めたり、排水口を広くして水を分散させたりします。
「どこから水が来るか」だけではなく、
「どこへ水を出すか」まで含めて排水を考える。
これが重要です。
地形と波形勾配を使って分散する
排水は、排水溝だけで行うものではありません。
地形に沿って道を通し、縦断勾配に緩急をつけることで、自然に水を逃がせる場所をつくることができます。
一定の勾配で長く登り続けるのではなく、地形を利用して勾配を変化させ、水を処理できる場所を途中につくります。
横断排水、波形勾配、カーブなどを組み合わせながら、一つの方法だけに頼らず水を分散します。

山側から入る水や湧水にも注意する
路面に降った雨だけでなく、山側斜面から流れ込む水にも注意が必要です。
切土を必要以上に高くすると、地形を大きく変えるだけでなく、山側から流れ込む水や湧水の影響を受けやすくなる場合があります。
また、湧水や地形的に水が集中する場所では、通常の路面排水だけでは処理できないことがあります。
そのような場所では、水を無理に止めるのではなく、水の流れを確認しながら、必要に応じて横断排水や側溝などを使って安全な場所へ導きます。
そもそも大量の水が集まる場所を避けられるのであれば、ルート選定の段階で避けることも重要です。
小さな沢は「洗い越し」で水の流れを残す
作業道が小さな沢や水の通り道を横断する場合があります。
こうした場所では、水を無理に止めたり、一か所へ強く集中させたりしないことが重要です。
広島県の森林作業道作設指針では、小渓流の横断について原則として「洗い越し施工」とする考え方が示されています。路面より低い通水面を設け、水が一か所へ集中して流速が上がらないようにすることも示されています。
自伐型林業でも、水がもともと流れている場所では、その水の通り道をできるだけ活かしながら安全に道を横断させます。

→ 【壊れない作業道シリーズ⑧】洗い越し施工|水の通り道を無理に止めない
作業道は施工後の確認も重要
森林作業道は、完成したら終わりではありません。
施工後の雨や時間の経過によって、水の流れが想定と変わることがあります。
雨上がりなどに、
路面に水が溜まっていないか。
わだちを水が長く流れていないか。
排水口に土砂や落葉が溜まっていないか。
排水した水が路肩や盛土法面を削っていないか。
などを確認します。
施工時には見えなかった水の動きが、実際に雨が降ることで分かる場合があります。
問題があれば、小さいうちに路面を整形したり、排水位置を調整したりします。
なお、降雨時の確認は安全を最優先とし、大雨や豪雨時の入山は避けます。
まとめ|水を集めず、長く流さず、分散する
森林作業道の排水で大切なのは、大きな排水施設をつくることではありません。
水がどこから来るのかを読み、
一か所へ集めない。
路面を長く流さない。
少量のうちにこまめに分散する。
そして、安全な排水先まで確認する。
ことです。
波形勾配、横断勾配、横断排水、カーブ、洗い越しなどは、そのために使う手法です。
一つの工法をすべての場所へ当てはめるのではなく、地形・土質・水の流れ・使用する車両などを見ながら組み合わせます。
道の線形を考えることは、水の流れを考えることでもあります。
水を集めず、長く流さず、山の地形に合わせて少しずつ逃がしていくことが、長く使い続けられる森林作業道につながります。
「壊れない作業道」という表現について
本サイトでは、地形や水の流れを読み、必要最小限の切土・盛土とこまめな分散排水などによって、崩れにくく長く使い続けられる森林作業道を「壊れない作業道」と表現しています。
これは、どのような豪雨や災害でも「絶対に壊れない」という意味ではありません。
地形・地質・土質・水の流れなど、その場所の条件を見ながら適切に施工し、施工後も点検・維持管理を続けることが前提です。
参考資料
- 林野庁「森林作業道作設指針」
掲載ページ:林野庁「路網整備の推進」 - 広島県「森林作業道作設指針」
掲載ページ:広島県「森林作業道の作設について」
この記事の執筆・監修
久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事
広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。
自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M
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