【壊れない作業道シリーズ⑥】抜根技術|根の性質を読むことで作業効率は劇的に変わる

【壊れない作業道シリーズ】

① 基本
② 木組み
③ 排水
④ ヘアピンカーブ
⑤ 洗い越し
⑥ 抜根
⑦ ルート選定


作業道のルート上にある支障木を伐倒した後に行う作業が「抜根」です。

しかし、抜根はただ掘ればよい作業ではありません。

根の張り方を理解せずに掘ると、
・時間がかかる
・燃料を無駄に使う
・機械に負担がかかる
・地山を崩す
といった問題が起こります。

一方で、根の性質を読み取ることができれば、
最小限の掘削で効率よく抜くことが可能になります。

この記事では、壊れない作業道づくりの視点から、
「根を読む抜根技術」を解説します。

抜根は“力仕事”ではなく“構造理解”

抜根は、力任せに掘る作業ではありません。

木は地面に立っているのではなく、
斜面を根でつかんでいます。

そのため、根の張り方を理解せずに掘ると、
必要以上に土を動かすことになります。

抜根とは、
「どこを切れば支えが外れるか」を読む作業です。

樹種による根の張り方の違い(重要ポイント)

一般的に以下の傾向があります。

・針葉樹(スギ・ヒノキ)
 → 谷側に支えるように根が張る

・広葉樹(ナラ・サクラ)
 → 山側に引っ張るように根が張る

ただしこれはあくまで傾向であり、
土質・傾斜・日照・水・風の影響によって変わります。

根の深さの違い

根の深さにも特徴があります。

・マツ:比較的深く入る(直根性)
・スギ:中程度
・ヒノキ:浅く横に広がる傾向

この違いを理解することで、
掘るべき深さと範囲を判断できます。

特にマツは別格です。

直径50cmを超えるマツは半日〜1日かかることも珍しくありません。

実例① 根が絡み合った最難ケース

これまでで最も手強かったのは、
マツとコナラの根が絡み合っていたケース。

  • チェーンソーで根を切断しながら作業
  • バックホーで少しずつ引き剥がす

合計1日を要しました

抜根は「単木」ではなく「周囲との関係」で難易度が決まります。

実例② アカマツの抜根

施工前
施工後

左側が切り口で右下が斜面下側で支えていた太い根

写真のアカマツは、

  • 根元直径:約45cm
  • 斜面に曲がって立っていた木

この木は、
谷側に太い根が2本強く張っていました。

作業手順:

  1. 周囲の土を除去
  2. 根の方向を確認
  3. チェーンソーで切り込み
  4. バックホーで引きちぎる

作業時間:約2時間30分

根の方向を読まなければ、倍以上かかるケースです。

抜根の基本手順

① 根の方向を読む

  • どこに主根があるか確認
  • 斜面との関係を見る

② 周囲の土をしっかり除去

ここを省くとすべてが非効率になる

③ 弱点側から攻める

  • 引き抜くのではなく「崩す」

④ 必要に応じてチェーンソー使用

  • 太い根のみ切断

根曲がりなど、根元が出材に適していない場合は
受け口・追い口を高い位置で切ることで
てこの原理により抜根が容易になります。
(上の写真のケースはいずれも根曲がり)

機械を壊さないための注意点

抜根はバックホーにとって最も負荷のかかる作業の一つです。

●NG行動

  • 力任せに引き抜く
  • 太い根を無理にこじる
  • 見えない根に突っ込む

●特に注意

根の裏側や下側の土をすくう動作

  • 油圧配管の破損
  • 油圧シリンダーの損傷

につながります。

排土板を上手く利用するのも効果的です。

チェーンソー使用時の重要ポイント

チェーンソーで根を切る場合は必ず:

土を完全に除去してから行う

理由:

  • 土が残ると刃が一瞬でダメになる
  • 作業効率が激減する

「切る前の準備」が大事です

抜いた根の活用(壊れない道づくりへ)

抜いた根は廃棄物ではありません。

活用方法

  • 法面の補強
  • 路肩の安定化

特にマツは、

腐りにくく補強材として非常に優秀

埋設された根は徐々に朽ちますが、

  • その頃には植物が根を張り
  • 法面はより強固になります

自然と一体化する構造

左の法面にマツの根株を3個埋めてます
左の法面にマツの根株を3個埋めてます

補足|マツの耐久性(東京駅の事例)

マツの耐久性は歴史的にも証明されています。

東京駅(1914年創建)の基礎には、
軟弱地盤を安定させるために

約1万1000本のマツ杭(丸太)が使用されました

2012年の保存・復原工事の調査では、

約100年経過しても腐朽が少なく健全な状態で残存

していたことが確認されています。

水中や地中では特に腐りにくい性質があります

まとめ

抜根は単なる「除去作業」ではありません。

根を読む技術=作業道の品質を決める技術

です。

  • 樹種ごとの特性を理解する
  • 根の方向を読む
  • 無理に引かない
  • 適切に切る

この積み重ねが、

壊れない作業道につながる

のです。

事務局 久保谷

関連記事:壊れない作業道シリーズ

① 森林作業道の基本|自伐型林業の道づくり

② 岩を避ける木組み工法|自伐型林業の現場施工

③ 作業道排水の基本|壊れない道づくりの考え方

④ ヘアピンカーブ施工|急傾斜地で壊れない道をつくる技術

⑤ 洗い越し施工|壊れない作業道の排水技術

⑥ 抜根技術|根の性質を読むことで作業効率は劇的に変わる

⑦ ルート選定|壊れるかどうかは8割ここで決まる


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