【壊れない作業道シリーズ③】ルート選定|地形と水を読み、無理のない道を通す

壊れにくさは、道をつくる前のルート選定で大きく変わる

森林作業道づくりでは、バックホーで土を動かし始める前に重要な仕事があります。

「どこに道を通すか」を決めるルート選定です。

どれだけ丁寧に施工しても、水が集まりやすい場所や無理な勾配のルートを選べば、路面の侵食や法面の崩れなどにつながりやすくなります。

反対に、地形や水の流れを読み、無理のないルートを選ぶことで、切土や盛土を抑え、排水もしやすい作業道になります。

今回は、私たちが森林作業道のルートを選ぶときに、現場でどこを見ているのかを紹介します。

この記事でわかること

・森林作業道のルート選定で大切な考え方
・尾根・谷・山腹をどう見るのか
・現地踏査で確認する地形、水、土質
・避けたい場所と、谷を横断するときの考え方
・施工前にルートを決める基本的な流れ

ルート選定の基本は「山の地形を読む」こと

森林作業道のルート選定では、地形・水・土質・勾配を見ながら、できるだけ無理なく通れる場所をつないでいきます。

その結果、基本となるのが、

「幹線は尾根」
「支線は等高線に平行」

という考え方です。

尾根は水が集まりにくく、幹線のルートとして利用しやすい地形です。そこから山腹へ支線を伸ばす際は、等高線におおむね平行に配置することで、急な勾配や大きな地形改変を抑えやすくなります。

ただし、実際の山では水の流れや岩盤、崩壊地などの条件が場所ごとに異なります。

基本は「幹線は尾根、支線は等高線に平行」。その基本を軸に、現地を歩いてルートを調整します。

尾根筋に幹線を通し、そこから山腹の等高線におおむね平行に支線を展開する森林作業道のルート選定図
尾根筋に幹線を通し、そこから等高線におおむね平行に支線を展開する森林作業道の基本的な路網イメージ。

ルート選定は、地形図だけでなく現地を歩いて決める

地形図や航空写真、GPSなどを使えば、施工前に山の形をある程度確認できます。

しかし、実際に山へ入ると、地形図だけでは分からない小さな谷や湧水、岩盤、崩れた跡、土質の変化などがあります。

そのため、大まかなルートを考えたうえで、実際に山を歩く「踏査」を行います。

現地で確認する主なポイントは、

  • 水がどこから来て、どこへ流れるか
  • 尾根・谷・斜面の形
  • 傾斜と地形の変化
  • 土質や岩盤の状況
  • 湧水や湿った場所
  • 過去に崩れた跡
  • 獣道や人の踏み跡など、山に現れている線

などです。

特に重要なのが水の痕跡です。

晴れている日でも、土の削れ方や落ち葉のたまり方、湿り具合などを見ると、雨が降ったときに水がどこを流れるのかが見えてきます。

ルート選定では、今の山を見るだけでなく、「雨が降ったとき、この場所の水はどう動くか」を考えます。

避けたいルート

谷に向かって長く上る道

谷や凹地は水が集まりやすい場所です。

その方向へ長く道を通すと、

  • 路面に水が集まりやすい
  • 路面が削られやすい
  • 路肩や盛土へ水が回りやすい

といった問題が起こりやすくなります。

谷を横断する必要がある場合はありますが、水が流れる方向へ長く道をつくらないことが大切です。

沢や水の流れを横断するときの考え方は、「洗い越し施工」の記事で詳しく紹介します。


急斜面を直線的に上る道

目的地へ最短距離で向かおうとすると、急斜面を直線的に上るルートになりがちです。

しかし、縦断勾配が急になると、雨水が路面を勢いよく流れやすくなり、車両の走行もしにくくなります。

路面が水路のようにならないよう、地形に沿って無理のない勾配でルートをつなぐことが重要です。

縦断勾配については、次の記事で詳しく解説します。

ルート選定で大切にしている3つのこと

① 地形に逆らわない

山を大きく削ったり、無理に盛土したりしなければ通せない場所は、できるだけ避けます。

地形をよく見て、山の形に沿った自然なラインを探します。


② 水を集めない

作業道を長く使うためには、水を一か所に集めないことが重要です。

ルートを決める段階から、

「水はどこから来て、どこへ逃がすのか」

を考えます。

排水は、道が完成してから考えるものではありません。


③ 山全体の路網を考える

その場その場で道を延ばすのではなく、まず山全体を見ます。

幹線となる尾根を決め、そこから支線をどう展開するか。

将来の間伐や木材搬出まで考えながら、山全体の路網を組み立てます。

森林の山腹を地形に沿って緩やかに曲がりながら通る森林作業道
地形に沿って開設した森林作業道。施工前に山を歩き、水の流れや地形、勾配などを確認しながらルートを選びます。

ルート選定の具体的な流れ

私たちは、おおむね次のような流れでルートを考えます。

STEP1|山全体の地形を見る

地形図などで、尾根・谷・傾斜など山全体の形を確認します。

STEP2|幹線となる尾根を確認する

現地を歩き、幹線を通す尾根筋と、その周辺の地形や水の流れを確認します。

STEP3|支線のルートを探す

幹線から、等高線におおむね平行に支線を展開できるルートを探します。

STEP4|水・土質・勾配を確認する

湧水や谷、岩盤、崩壊跡などを確認し、無理のある場所はルートをずらします。

必要に応じて再び歩き、山全体として無理のない路網になっているか確認します。

ルート選定で、その後の施工が変わる

無理のないルートを選ぶことができれば、

  • 切土を低く抑えやすい
  • 盛土を少なくしやすい
  • 急な縦断勾配を避けやすい
  • 水を分散して排水しやすい

といった施工につながります。

逆に、ルート選定に無理があれば、その後の施工で補わなければならない部分が増えていきます。

だからこそ、バックホーを入れる前に山を歩く時間が重要です。

作業道づくりは、掘り始める前から始まっています。


まとめ|基本は「幹線は尾根、支線は等高線に平行」

森林作業道のルート選定では、

「幹線は尾根、支線は等高線に平行」

を基本に、地形・水・土質・勾配を見ながら現地でルートを調整します。

大切なのは、山へ無理に道を押し込むのではなく、山の地形を読み、できるだけ無理のない場所へ道を通すことです。

そして、ルートを考える段階から水の動きを読み、山全体の路網を考える。

こうした施工前の判断が、その後の作業道の安定性や維持管理のしやすさにつながります。

次の記事では、ルート選定と密接に関係する「縦断勾配」について紹介します。

このシリーズの考え方と参考資料

本シリーズでは、安芸太田町で行う森林作業道づくりについて、当会が現場で重視している考え方と施工事例を紹介しています。

路線計画や施工方法を検討する際は、林野庁「森林作業道作設指針」および広島県「広島県森林作業道作設指針」を参考にしています。

森林作業道の計画・施工は、地形、地質、土質、水の流れ、利用目的、関係する法令・基準などに応じて、現地ごとに検討が必要です。本文中で紹介する数値や施工方法は、すべての現場に一律に適用できるものではありません。

このシリーズでいう「壊れない作業道」は、絶対に壊れない道という意味ではありません。地形と水の流れに配慮し、必要以上に山を削らず、施工後も点検・補修を行いながら、壊れにくく長く使い続けることを目指す考え方です。

参考資料

・林野庁「路網整備の推進について(森林作業道作設指針)」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sagyoudo/romousuisin.html

・広島県「森林作業道の作設について(広島県森林作業道作設指針)」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/86/shinrinsagyoudou.html

現場での判断

作業道のルートは、地形、水の動き、土質、傾斜、立木の状況を現地で確認しながら選びます。

当会では、幹線は尾根に、支線は等高線に平行に通すことを基本としています。谷を横断する必要がある場合も、地形と水の流れを確認し、道に沿って水が長く流れる形にならないよう調整します。

最短距離を結ぶことではなく、切土・盛土を必要以上に大きくせず、水を集めにくい無理のない線を探すことを重視しています。実際のルートは現地条件によって変わるため、この考え方をすべての山にそのまま当てはめるものではありません。


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

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