【壊れない作業道シリーズ④】縦断勾配|急勾配を避け、水を長く流さない

森林作業道のルートを決めるとき、「どこを通すか」と同時に考えなければならないのが、道をどのくらいの勾配で上げ下げするかです。

この道の進行方向の傾きを「縦断勾配」といいます。

縦断勾配が急になるほど、路面を流れる水は速くなりやすく、長い区間を流れ続ければ、路面侵食や水の集中につながります。

また、木材を積載した車両では、上りだけでなく、下りの走行安全性も重要です。

一方で、単純に「勾配は緩ければ緩いほどよい」というわけでもありません。

大切なのは、地形や水の流れ、土質、使用する車両を見ながら、長い急勾配を避け、水を一か所に集めず、こまめに分散して排水できる縦断線形をつくることです。

この記事でわかること

  • 縦断勾配とは何か
  • %勾配と角度の関係
  • 森林作業道で考える縦断勾配の目安
  • 急勾配を長く続けない理由
  • 波形勾配と分散排水の考え方
  • ヘアピンカーブや作業車両との関係
  • 縦断勾配と横断勾配の違い

縦断勾配とは?

縦断勾配とは、道を進む方向の傾きのことです。

例えば、水平距離100mに対して標高が5m上がる場合、縦断勾配は5%です。

森林作業道では、山の地形に合わせながら、この縦断勾配を調整して道をつないでいきます。

森林作業道の縦断勾配を示す図。水平距離100mに対して高低差5mの場合は5%勾配となる
縦断勾配は、森林作業道を進む方向の傾きです。水平距離100mに対して高低差が5mの場合、縦断勾配は5%となります。

縦断勾配の%は、

高低差 ÷ 水平距離 × 100

で求めます。

例えば5%勾配は、角度に換算すると約2.9度です。

「10%」「15%」と言われても坂の傾きをイメージしにくいため、次の図では角度との関係もあわせて示します。

縦断勾配の計算方法と%・角度の関係を示す図。水平距離100mで高低差5mは5%勾配で約2.9度
縦断勾配(%)は、高低差を水平距離で割って100を掛けて求めます。5%勾配は角度にすると約2.9度です。

縦断勾配は「何%ならよい」と数字だけでは決められない

広島県の「森林作業道作設指針」では、縦断勾配は、木材を積載した車両が安全に上り・下りできることを基本として計画し、岩やよく締まった礫質土など現地条件が良い場合は、概ね10度(18%)以下とされています。

土地の制約などからやむを得ない場合には、短区間に限り概ね14度(25%)程度とし、敷砂利などによって路面侵食を抑えることとされています。

ただし、この18%は、

「18%まで急にしてよい」という目標値ではありません。

実際には、

  • 使用する車両
  • 木材を積載したときの重量やバランス
  • 土質や路面の固さ
  • 雨天時の滑りやすさ
  • 勾配が続く距離
  • 水の集まり方
  • 直線か曲線か

などを見ながら判断します。

林野庁の「森林作業道作設指針」でも、現地条件が良い場合は概ね10度(18%)以下とする一方、真砂土や粘性土など条件が悪い場所では、路面侵食や路体の安定、走行安全性を考えて、さらに緩い勾配とする考え方が示されています。

また、2トン積トラックを走行させる場合も、林業機械より走行速度が速く、制動距離が長いことなどから、走行安全性を考えて緩勾配とすることが示されています。

そのため、作業道づくりでは、

「何%まで上れるか」ではなく、「その道を安全に、繰り返し使い続けられるか」

という視点で勾配を決めます。


急勾配を長く続けない

縦断勾配が急になるほど、路面を流れる雨水は速くなりやすくなります。

特に、同じ方向へ下る勾配が長く続くと、路面を流れる水が次第に集まり、

  • 路面が削られる
  • わだちや溝が深くなる
  • 路面が水みちになる
  • 路肩や盛土側へ水が流れ込む

といった問題につながりやすくなります。

重要なのは、急勾配そのものだけではありません。

「どのくらいの勾配が、どのくらいの距離続き、そこへどれだけの水が集まるか」

を見る必要があります。

そのため、長い一方向の勾配をできるだけ避け、路面水がまとまった流量になる前に分散して排水できる線形にします。

急勾配が長く続いた森林作業道で起こりやすい路面侵食、水の集中、路肩・盛土への負担、走行安全性の低下を示す図
急勾配が長く続くと、水が路面に集まりやすくなり、路面侵食や路肩・盛土への負担、走行安全性の低下につながります。


縦断勾配は「波形」にして水を分散する

森林作業道では、一定の勾配を長く続けるのではなく、地形を利用しながら縦断勾配を緩やかに変化させる「波形勾配」を利用します。

林野庁の森林作業道作設指針でも、地形に沿った屈曲線形と波形勾配によって、土工量を抑えながら分散排水する考え方が基本として示されています。広島県の指針でも、線形は地形に沿った屈曲線形とし、排水を考慮した波形勾配とすることが示されています。

緩やかな上り下りをつくりながら、雨水が長い距離を路面上で流れ続ける前に、安全な場所へ逃がします。

大切なのは、

水を集めないこと。
長く流さないこと。
安全な場所へ分散して逃がすこと。

です。

下の写真は、実際に安芸太田町内で施工している森林作業道です。

この区間では、地形に合わせて右→左→右とカーブしながら縦断線形を変え、それぞれの右カーブに入る手前で路面水を排水しています。

水をそのまま次のカーブまで流し続けず、複数箇所で分散することで、一か所へ水が集中するのを避けています。

林野庁・広島県の指針でも、曲線部へ雨水を流入させないため、カーブ上部の入口手前で排水する考え方が示されています。

波形勾配で線形を変えながら複数箇所で分散排水している森林作業道の実例写真
波形勾配と分散排水の実例。地形に沿って右→左→右と線形を変えながら、右カーブ手前で路面水を排水し、水を長く流さず複数箇所で分散しています。

排水する間隔を一律に「何m」と決めることはできません。

縦断勾配、区間の長さ、周囲から流れ込む水の量、集水範囲、土質、排水先の状態などを見ながら判断します。

自伐型林業の現場では、排水間隔20〜30m程度を一つの実務上の目安としますが、地形・勾配・集水範囲などに応じて調整します。

重要なのは、

水がまとまった流量になる前に、安全な場所へ逃がすこと

です。林野庁・広島県の指針でも、排水施設の間隔は縦断勾配、区間延長、集水区域などを考慮して決める考え方が示されています。

ルート選定と縦断勾配は一体で考える

縦断勾配は、道を施工するときになってから決めるものではありません。

ルート選定の段階から考えます。

当会では、

幹線は尾根、支線は等高線におおむね平行

を基本として山全体の路網を考えます。

幹線で標高を上げていく場合も、急斜面を直線的に上るのではなく、地形を利用しながら無理のない勾配でつなぎます。

必要な場所ではヘアピンカーブを使って標高を上げ、そこから山腹へ支線を展開します。

ルートを決める段階で縦断勾配まで考えておけば、大きな切土や盛土を減らし、水も処理しやすくなります。

→ 【壊れない作業道シリーズ③】ルート選定|地形と水を読み、無理のない道を通す

ヘアピンカーブでは勾配を抑える

急勾配と急な曲線が重なると、車両の走行安全性は低下します。

特に、木材を積載した車両が下る場合は、制動や旋回の安全性を考える必要があります。

林野庁・広島県の指針でも、急勾配区間と曲線部の組み合わせは避けることが示されています。

そのため、ヘアピンカーブそのものではできるだけ縦断勾配を抑え、進入・退出部分も急激な勾配変化を避けます。

ヘアピンは、急斜面を無理に直登する代わりに標高を上げるための方法ですが、

「急勾配+急カーブ」をつくらない

ことが重要です。

やむを得ず勾配が急になる場合

実際の山では、すべての区間を同じ緩やかな勾配でつなげることはできません。

岩盤や地形、尾根への取り付きなどによって、部分的に勾配が急になる場合もあります。

その場合でも、

「短いから大丈夫」

と単純に判断することはできません。

土質、路面状態、使用する車両、積載状態、排水、直線か曲線か、勾配がどの程度続くのかなどを確認します。

重要なのは、数値上の限界まで勾配を使うことではなく、

その場所で無理のない線形を探すこと

です。

条件が悪い場合は、無理にそこへ道を通すのではなく、ルートそのものを見直すことも必要です。


作業車両によって安全な勾配は変わる

森林作業道を通る車両は、現場によって異なります。

軽トラック、2tトラック、林内作業車、フォワーダ、小型バックホーなど、それぞれ走行特性が違います。

そのため、

「この機械なら何%まで」

と一律に決めることはできません。

特に注意したいのは、木材を積載した状態での下り走行です。

登れるかどうかだけでなく、

  • 安全に止まれるか
  • 雨天時に滑らないか
  • カーブを安全に通過できるか
  • 路肩へ無理な荷重がかからないか

まで考えて勾配を決めます。

作業道は、機械の能力の限界を試す場所ではありません。

余裕を持って安全に使える線形にすることが重要です。


緩い勾配でも排水は必要

急勾配を避ければ、それだけで壊れにくい道になるわけではありません。

勾配が緩い場所でも、水が一か所に集まったり、山側から水が流れ込んだりすれば、路面の軟弱化や侵食につながります。

そのため、縦断勾配と排水は別々に考えるのではなく、一体で考えます。

縦断勾配を緩やかな波形にしながら、水が集まる前に安全な場所へ逃がす。

これが、長く使える作業道をつくる基本です。

ここで整理しておきたいのが、縦断勾配と横断勾配の違いです。

縦断勾配が「道を進む方向」の傾きであるのに対し、横断勾配は「道幅方向」の傾きです。

森林作業道の縦断勾配と横断勾配の違いを示す図。縦断勾配は進行方向、横断勾配は道幅方向の傾き
縦断勾配は道を進む方向、横断勾配は道幅方向の傾きです。実際の排水方法は、地形・土質・排水先などの現場条件を見ながら判断します。

※この図は、縦断勾配と横断勾配の方向の違いを示す概念図です。

森林作業道では、横断方向に常に谷側への片勾配を設けるという意味ではありません。

林野庁の「森林作業道作設指針」では、土構造を基本とする森林作業道について、原則として路面の横断勾配を水平にした上で、縦断勾配を可能な限り緩やかにし、波形勾配を利用してこまめに分散排水する考え方が示されています。

地形や水の流入などによって、それだけでは処理できない場合には、現場条件に応じた排水方法を検討します。

横断勾配と路面排水については、次の記事で詳しく紹介します。

→ 【壊れない作業道シリーズ⑤】横断勾配(路面排水)

まとめ|大切なのは「何%まで登れるか」ではない

縦断勾配は、森林作業道の走行安全性と排水の両方に関わる重要な要素です。

大切なのは、

「何%までなら道をつくれるか」

ではありません。

地形を読み、長い急勾配を避け、曲線部では勾配を抑える。

そして、波形勾配を利用しながら、

水を集めない。
長く流さない。
安全な場所へ分散して逃がす。

土質や使用する車両、排水先まで考えながら、無理のない線形をつくります。

森林作業道は、一度通れば終わりの道ではありません。

次の間伐、その次の間伐でも使えるように、長く安全に使い続けられる道をつくることが大切です。

このシリーズの考え方と参考資料

本シリーズでは、安芸太田町で行う森林作業道づくりについて、当会が現場で重視している考え方と施工事例を紹介しています。

路線計画や施工方法を検討する際は、林野庁「森林作業道作設指針」および広島県「広島県森林作業道作設指針」を参考にしています。

森林作業道の計画・施工は、地形、地質、土質、水の流れ、利用目的、関係する法令・基準などに応じて、現地ごとに検討が必要です。本文中で紹介する数値や施工方法は、すべての現場に一律に適用できるものではありません。

このシリーズでいう「壊れない作業道」は、絶対に壊れない道という意味ではありません。地形と水の流れに配慮し、必要以上に山を削らず、施工後も点検・補修を行いながら、壊れにくく長く使い続けることを目指す考え方です。

参考資料

・林野庁「路網整備の推進について(森林作業道作設指針)」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/seibi/sagyoudo/romousuisin.html

・広島県「森林作業道の作設について(広島県森林作業道作設指針)」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/86/shinrinsagyoudou.html

広島県の指針は、縦断勾配を概ね10度(18%)以下で検討することや、波形勾配による分散排水、カーブ上部入口での排水などを示しています。
林野庁の指針も、地域の地形・地質・土質・気象条件等を踏まえた無理のない線形と、波形勾配による分散排水を基本としています。

現場での判断

縦断勾配は、地形、土質、路面の状態、使用する車両・機械、走行距離、カーブ、水の集まり方と排水先を踏まえて判断します。

当会では、急な勾配が長く続かないようにし、地形に合わせて勾配を変化させながら、路面水を長く流さず、こまめに分散して逃がすことを重視しています。

本文で示す勾配や排水の間隔は、現場で検討する際の目安です。一つの数値をすべての現場に当てはめるのではなく、走行の安全性と排水を一体で確認しながら決めます。


この記事の執筆・監修

久保谷 幸雄|林業家
一般社団法人 安芸太田町自伐型林業を推進する会 監事

広島市出身。2020年から自伐型林業に取り組み、2022年に脱サラして専業の林業家に。広島県安芸太田町を拠点に、森林作業道づくり、間伐、伐倒・造材・搬出、森林資源の活用を実践しています。

自伐型林業歴:6年|森林作業道の作設実績:6,500m超(2026年9月現在)
愛機:STIHL MS 500i/MS 201 C-M

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