※ 「壊れない作業道」は、自伐型林業の現場で広く使われる標語であり、絶対に壊れないという意味ではありません。山に合わせる設計と日々の維持管理によって、壊れにくく長持ちさせる技術思想を指します。施工後は豪雨などの後に必ず点検を行い、必要に応じて補修してください。
森林を継続的に管理していくために欠かせないのが、山の中につくる「森林作業道」です。
しかし、道はつくればよいというものではありません。
ルート選定や排水、切土・盛土などの施工を誤れば、雨水が集中し、路面の侵食や法面の崩壊につながることがあります。
私たち一般社団法人安芸太田町自伐型林業を推進する会では、山への負担をできるだけ抑えながら、長く使い続けることのできる作業道づくりに取り組んでいます。
この「壊れない作業道シリーズ」では、安芸太田町の実際の施業現場をもとに、森林作業道をつくるうえで重要となる考え方や施工技術を紹介しています。
壊れにくい作業道とは
ここでいう「壊れにくい作業道(通称:壊れない作業道)」とは、まったく損傷しない道という意味ではなく、地形や水の流れに配慮し、適切な維持管理を行いながら長く繰り返し使える道を指しています。
自伐型林業では、一度に広い面積を伐採するのではなく、同じ森林に繰り返し入りながら間伐を続けていきます。
そのため、森林作業道も「一度使って終わる道」ではありません。
5年後、10年後、さらにその先も森林を管理し、木材を搬出するための基盤として使い続けます。
だからこそ重要なのが、
・地形に逆らわないルートを選ぶ
・必要以上に山を削らない
・切土・盛土を必要最小限にする
・雨水を集中させない
・地山の強さを活かす
という考え方です。
壊れにくい作業道づくりは、単なる「道づくり」ではありません。
森林を長期的に管理し、木材を継続的に利用していくための、森づくりの基盤となる技術です。
壊れない作業道シリーズ
作業道づくりは、一つひとつの技術が独立しているわけではありません。
「どこに道を通すか」を考え、勾配を決め、切土・盛土を行い、水を処理する。
それぞれの技術がつながって、初めて長く使える道になります。

初めて読む方へ
初めて森林作業道について学ぶ方は、①~③を順番に読むことをおすすめします。
第1章|作業道を計画する
① 森林作業道の基本
なぜ幅の狭い道をつくるのか

まず知っておきたいのが、森林作業道づくりの基本的な考え方です。
山への負担を抑えながら森林を継続的に管理するため、必要最小限の道をつくります。
作業道の役割や基本構造など、シリーズ全体の入口となる記事です。
② なぜ道が壊れるのか
壊れる道には原因がある

森林作業道が壊れる原因を知ることは、壊れにくい道をつくる第一歩です。
雨水、地形、勾配、盛土、施工方法など、道の崩壊につながる要因を考えます。
③ ルート選定
壊れるかどうかは、道をつくる前に決まる

作業道づくりで特に重要なのがルート選定です。
地形や水の流れを読みながら、できるだけ無理なく道を通せる場所を探します。
施工技術だけでは補うことのできない、作業道づくりの重要な工程です。
第2章|道の形を決める
④ 縦断勾配
急すぎる道をつくらない

道の縦方向の勾配は、走行性だけでなく排水や路面侵食にも大きく関係します。
地形に合わせながら、無理のない勾配でルートをつなぐことが重要です。
⑤ 横断勾配(路面排水)
雨水を道の上に集めない

作業道に降った雨をどのように逃がすか。
その基本となるのが、路面につける横断勾配です。
水を長い距離流さず、分散して排水するための基本技術を紹介します。
⑥ 切土・盛土の基本
地山を活かして、必要以上に山を動かさない

森林作業道では、山側を削る「切土」と、その土を利用する「盛土」が必要になります。
重要なのは、必要以上に地山を削らず、不安定な盛土を大きくしないことです。
実際の施工をもとに、路体を安定させる基本を紹介します。
第3章|水を処理する
⑦ 作業道排水の基本
作業道を守る最大のポイントは「水」

森林作業道の維持において、特に注意しなければならないのが雨水です。
水を集めず、流し続けず、できるだけ早く分散させる。
壊れにくい道をつくるための排水の基本的な考え方を解説します。
⑧ 洗い越し施工
水の通り道を無理に止めない

地形によっては、作業道を横切って水が流れる場所があります。
そこで活用するのが「洗い越し」です。
水を無理に閉じ込めるのではなく、安全に道を横断させる排水技術を実際の施工例から紹介します。
第4章|地形に対応する
⑨ ヘアピンカーブ施工
急傾斜地で安全に標高を上げる

山の斜面を登っていくためには、地形によってヘアピンカーブが必要になります。
一方で、施工方法を誤ると大きな切土や盛土が生じる場所でもあります。
急傾斜地で安定したカーブをつくるための考え方と施工を紹介します。
⑩ 岩を避ける木組み工法
岩を無理に動かさず、地形を活かす

作業道のルート上に大きな岩が現れることがあります。
すべての障害物を取り除いて道をつくる必要はありません。
岩を残しながら木組みを利用して道を通す、実際の施工方法を紹介します。
⑪ 抜根技術
根の構造を読み、必要以上に地山を崩さない

作業道のルート上にある支障木を伐採した後には、抜根作業が必要になる場合があります。
根の張り方を理解せずに掘れば、必要以上に土を動かすことになります。
樹種や地形による根の特徴を読みながら行う抜根技術を紹介します。
⑫ 支障木伐採
作業道開設の前に行う安全な伐倒

作業道のルート上には、施工前に伐採しなければならない立木があります。
特に斜面では、木の傾きや重心によって伐倒方向を慎重に判断する必要があります。
牽引を利用した伐倒など、実際の現場で行った支障木処理を紹介します。
⑬ 岩盤掘削施工
岩盤に当たったとき、どう道を通すか

山の地質は場所によって大きく異なります。
施工中に硬い岩盤が現れ、バックホーだけでは掘削できないこともあります。
時間をかけながら岩盤を掘削し、安定した路体を確保した実際の施工事例を紹介します。
作業道づくりは「点」ではなく「つながり」で考える
森林作業道では、
ルート選定
↓
縦断勾配
↓
横断勾配
↓
切土・盛土
↓
排水
↓
地形に応じた現場施工
という一連の判断がつながっています。
例えば、排水だけを丁寧に施工しても、そもそものルート選定に無理があれば、長期的に安定した道を維持することは難しくなります。
反対に、地形をよく読み、無理のないルートを選ぶことができれば、大規模な切土や盛土を減らし、山への負担を小さくすることができます。
「どう施工するか」の前に、
「どこに、どのように道を通すか」
を考えることが、壊れにくい作業道づくりの出発点です。
作業道は、森を育て続けるための基盤
私たちが目指しているのは、道をつくることそのものではありません。
作業道を使って森林に入り、間伐を行い、木材を搬出し、残した木を育てる。
そして数年後、再び同じ森林に入り、成長量の範囲内で間伐を繰り返していく。
その循環を支えるのが森林作業道です。
一度つくって終わる道ではなく、
次の間伐にも、その次の間伐にも使える道。
そうした森林管理の基盤を残すことが、100年先を見据えた森づくりにつながると考えています。
安芸太田町の現場から技術を発信していきます
「壊れない作業道シリーズ」では、教科書的な説明だけではなく、安芸太田町の実際の森林で行っている施工を紹介しています。
山の地形、地質、立木、水の流れは一つとして同じではありません。
現場では、基本を踏まえながら、その山に合わせて判断することが求められます。
これからも実際の施業を通じて得た経験や施工事例を記録し、森林所有者、林業に取り組む方、これから自伐型林業を学びたい方に役立つ情報として発信していきます。
※本シリーズで紹介している施工方法や数値等は、個別の現場での実践例を含みます。実際の森林作業道の開設にあたっては、地形・地質・降水・法令・各種基準等を確認し、現場条件に応じて適切に判断する必要があります。
実際の作業道を見てみませんか?
安芸太田町では、自伐型林業の施業地見学会や森林作業道づくりの研修を行っています。